闇の中の愛を

五三竜

秘密の多い彼

 彼の心は闇に染っていた。いかなる光を受け付けず、どんな言葉も消し去ってしまう。大丈夫って言葉さえも、気がつけば鋭いトゲとなり彼を心を貫く。


 彼はそんな日々を過ごしていた。そして、彼はいつしか誰からも好かれず、誰も好きになることはなくなった。


 しかし、ある日彼はある女性を好きになった。その女性というのはクラスメイトで隣の席に座る女性だ。


 彼は彼女が好きになった。


 しかし、そのことを誰に言う訳でもない。自分自身にさえ秘密にして心を壊さないようにする。


 彼はそうして何とかその思いを心の奥底に押し潰していた。


「……」


 彼は無言で窓の外を見つめる。お天道様は全てを見透かすと言うが、恐らくこの気持ちは見透かされないだろう。


 誰にも教えない。友達にも、家族にも、その女性にも、そして自分自身にも。好きだと言うことを秘密にする。


 そして彼は闇の中はと入っていく。しかし、彼は完全に闇に落ちることは無い。なんせ、彼女がいるから。もし闇に落ちそうになれば、その秘密を自分自身に少しだけばらす。そうして光と向かっていく。


 そして彼は、そんな日々を今日も過ごす。

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闇の中の愛を 五三竜 @Komiryu5353

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