第3話 村の秘密

 いや帰って来たか、ドアノブがガチャガチャと回される?

 鍵を忘れてきたのか?

 鍵を開けて、顔を見た瞬間に、昨夜はお楽しみでしたねとでも、嫌みを言うか。

 そんな事を考えながら、ドアへ向かう。


 重い体で、のぞき窓を開けると、そこには村のおさ達が立っていた。

「親父達、どうして?」

「まあ良い。話は後だ。鍵を開けてくれ。それと、この薬も飲め」

 鍵を開けながら考える。

 どうして、体調が悪いことまで知っている。


「どうして……」

「まあいい。先に飲め」

 そう言って丸薬を、三粒くれる。


 黙って、口に放り込み、水で流し込む。

「頭痛とだるさだろ。他に症状はないか?」

「うん。その二つ」

 そう言うと、こっくりと親父は頷く。


「間違いないな。何人操った?」

「は?」

「お前の仕業だろ。商家の屋敷が全焼。波動を感じて、物見から連絡が来た。説明をしろ」

「えっ俺。夢」


「そうだ、夢の中で人を操り人を殺す。タイプによっては、人を使わず殺すことも出来る。うちの村人の能力だ」

「えっじゃあ。昨夜のは夢じゃなく」

 そう言うと、呆れたような顔をされる。


「お前の力で、お前がやった。恐ろしいことに物まで持ってこられるのか?」

 そう言って、ベッド脇に置いてある大きな袋。


「これ屋敷にあった金」

「やはり。それでお前は操ったのか? それとも直接か?」

「最初は直接で、後は操った」

 何故か親父達が驚く。


「両方で、取り寄せまで出来る。お前が次の長になれ」

「そうじゃな。わしよりも強力そうだ。後は距離じゃな」

 そう言って、長まで嬉しそうに笑う。


 俺の村は、この国の暗殺集団。

 王からなど、偉い人から依頼を受けて暗殺を行う。


 『深淵の夢人』と呼ばれて、国からも恐れられているそうだ。

 大体十四歳頃で、第一弾の能力発現があり、妙に難しいことを言ってみたり、突然高笑いとか、『勝手に我の右手が、暴れ出す』と騒ぐというような、奇妙な症状が現れる。


 十七歳を迎えて本格的に、遠隔での暗殺能力。

 『傀儡の呪い』を発現をする。


 その力を使い仕事を受ける。

 その時に、依頼人には必ず釘を刺す。

 『世の深淵には触れてはならぬ。依頼をしたらすべて忘れよ。興味を持ち深淵を覗くならば、貴様も覗かれていることを理解しろ』そう注意をするようだ。


 そう。世の秘密には、触れてはならない。

「よいな」

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他人の秘密は蜜の味と言うが、触れてはいけない秘密もある。 久遠 れんり @recmiya

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