第2話 気にするな——そんなのは、よくあることだ
次にやってきたのは、きっちり身なりを整えた訪問着姿の中年女性。
人間だが……その視線は、先に入室を果たしていた例の集団を探るような目で観察した後、いまひとりの美少女然とした父兄に鋭い一瞥をはなった。
落ちつきをはらってはいるが、やつらを警戒して緊張状態にある。
そのへんに、ただならぬものを感じたのだろう。
主婦業と茶道師範のかたわら、悪霊祓いも
開発された村が住人を募った初期に
その小枝がここを出て行ったのははるか昔のこと。彼女の先祖がなした所業になるので、〝出戻り〟とするのはいささか語弊があったが……。
わたしの感覚では、似たようなものだ。
この教室に
どうしてここにいるのだろうと思っていれば、その
その父子の移住が成立してからさほどもないことだし。正式に受けいれてくれる企業を近辺に見いだせば、彼らの経済的な問題も解消されるに違いない。
ある素養……可能性を磨かないのは、実にもったいないことだと思うが……。
「ねぇさん、そんなに急がなくても大丈夫だよ。なにかと物騒ではあるけど、そう滅多なことは起きないだろうからさ……」
こそっと、姉に耳打ちしている。
失業して姉を頼ってきたはいいが、この街のありようをその身をもって知るにあたり、息子の学校生活に懸念をおぼえ、その道で助けになりそうな姉に相談を持ちかけた……と、いったところだろうか?
父兄の姉の同伴はめずらしいことだが、この学園にあって、前もって要望を伝えていれば、べつに複数で参加しようとルール違反ではない。
先に入室を果たしている七名にかんして言えば、来訪の許可をとっているかどうかも怪しいところだが――
そうしているなかに、こつこつと杖をつく音が近づいていた。
続いてやって来たのは、左足が義足で、左目があるべき位置に眼帯を巻き、存在していない片方の視覚器官を隠しているふりをしている長身の男……。
必要でもない杖をつき、歩き方も変え、おのが特異性を念入りに、ごまかしている。
脅しが趣味のこれがわざわざ人間をよそおってこの場にやってくるとは!
本能で
ウルフ系や龍神の化身、狐に
ぁあ、
ともあれ、それの来訪は意想外だ。
このクラスには《一つ目入道》の子供か、もしくはその係累がいるのか?
――人に限らず、存在が集まりだせば秘密や謎はつきものだが……
わたしがとまどっていると、このクラスの担任。
まだ、始業のベルは鳴っていない。
教師の来訪に、こころなしか教室内の雰囲気が変化したようにも思えたが、いぜんとして、休憩時間の安楽な空気はただよっている。
わたしは瞠目した。
さすがは、代々この土地を守り続けてきた一族の
多少、ふだんと違う行動してもおかしく見えることはない。この土地の気そのものになじんでいる。
氏子として生きることを
わたしは彼女の素養の確かさに感動するとともに、幾ばくかの
この地が、ふたたび賑わいをとりもどどすことを切に願っていた…――その
次世代の育成に
一度は失われかけた故郷——これを
それでもその素養の豊かさを
ぁあ……もう、ほどなく授業が始まるな。
そして彼女は、不可解そうな表情をみせながらうつむいたかと思うと、ぽつりと独り言ちた。
「……おかしいな……。みんな、知ってる子なのに、
……まぁ、たしかに。そう見えるだろう。
だが…——
そんなことは気にするな。
こんな
こうして眺めていれば——参加したくなることも、あるものだからな……。
ぽえてぃっく・びれっじ ~うちの学校は秘密が多い~ ぼんびゅくすもりー @Bom_mori
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