花子さんと口裂け女とゲストさん②

「さぁ!今回も始めるわよ!花子さんと口裂け女とゲストさん」


「イエ~イ♪」


「ふぅ、それにしてもこのタイトル長いわね」


「え~、新しい番組になったばかりなのに、もう変えるの~?」


「違うわよ!略称が欲しいと思っただけよ」


「略称ね~…単語の最初の文字を切り取るってのはよくあるよね~」


「最初の文字ね……花子、口裂け女、ゲストだから、花口ゲ…ハナクチゲ……気持ち悪いわね」


「じゃあさ、カタカナにしちゃおうよ~。花の草冠を取ってイヒ。口は漢字じゃなくてカタカナでゲはそのまま。名付けてイヒロゲ!」


「発想はいいけどピンと来ないわね。そういえば、略の仕方で特殊なのあるわよ。タイトルの平仮名だけを切り取ったりするパターン。この番組だと、さんとけとさん……ダメね。あーあ、タイトル変えるんじゃなかったわ。トイレの花子さんラジオに戻そうかしら」


「え~、私の名前無くなっちゃうの~」


「冗談よ。とりあえず、視聴者に案を募集しようかしら」


「丸投げだ~」


「人聞き悪いわね。言っておくけど、視聴者が考えた愛称ってのは秀逸で親しみやすいんだから!視聴者ナメんじゃないわよ!」


「ふ~ん……あ!どうせなら質問とかも募集しようよ!その方がラジオ番組っぽいよ」


「ナイスアイデアね!タイトルの略称は決まらなくても支障はないけど、質問とかは欲しいわね」


「えへへ~、私、役に立った~♪」


「話は一段落したし、メインコーナーのゲストを……て居ないわね」


「番組が新しくなって2回目でゲスト不在…番組存続の危機だよ~、どうしよう、花ちゃ~ん」


「ゲストのオファーはあんたの仕事でしょ、なにやってんのよ?」


「ちゃんとコックリちゃん呼んだよ~、玉藻前さんは見つからなかったけど…」


「あんた、あのキツネ女も呼ぶつもりだったの?」


「うん。だって、今回の話に出てきたし……あ、あと少年も」


「キツネ女は呼んでも来ないでしょ。それとあいつは子供なんだから呼ばなくていいの」


「仲間ハズレはよくないよ~」


「あのね、この番組は深夜放送なのよ!呼べるわけないでしょ!」


「花ちゃん、良識人だね~」


「とりあえずゲスト呼ぶわよ」


「どうやって~?」


「簡単よ!おいでませぇ」


「あ、花ちゃんズル~イ。私もやりたかった」


 ポンッ


「ルールを守れー」


「うっさいわね、そもそもあんたが儀式グッズ一式渡したんじゃない。独りだった私に渡したって事は1人で儀式する前提だったわけでしょうが」


「むぐぐ」


「論破されるコックリちゃん可愛い♪」


 ガタンッ 


「ぎゃあああぁ」


「むぎゅうぅ」


「ほら、ゲストに乱暴しないの」


「乱暴じゃないよ~」


「いいから、コックリを開放しなさい。話が出来ないでしょ」


「は~い」


「はぁ、はぁ、死ぬかと思ったわ」


「抱きしめただけで死ぬわけないでしょ。とりあえず自己紹介でもしなさい」


「ふん!私はコックリさん。私を呼ぶ時はルールを守りなさい。じゃないとつねるわよ。あと敬意を払いなさい。そこの女みたいに馴れ馴れしくしたら許さないから」


「え~なんで~」


「コックリの自己紹介も終わったし今日はこれくらいにしましょうか」


「え~コックリちゃんとの絡み短いよ~」


「じゃあ、前回話題に出た締めの言葉でも決めましょうか」


「そだね~」


「私、まだ居なきゃいけないわけ?」


「当たり前でしょ!早く決まれば、あんたもそれだけ早く帰れるわよ」


「いい事聞いたわ。それなら、これで決まりよ!“さよなら さよなら さよなら”。どう?印象的だし、キャッチーな言葉でしょ!」


「ボツね」


「なんでよ?」


「この番組が映画番組だったら、採用してもいいけど」


「じゃあ、“サービス♪サービス♪”でどうよ?」


「なにをサービスする気よ?」


「んー…サービス担当のこの女を脱がせればいいじゃない」


「コックリちゃん、私の事そんな風に思ってたの?き~ず~つ~く~」


「うっさい!あんたは私の天敵なのよ!」


「しゅ~ん」


「あんたらの関係性は置いといて、その案もボツ。コンプラ的にアウトよ」


「どうせ視聴者には見えないでしょ。ラジオなんだし」


「コックリちゃん、冴えてる~♪」


「あんた、それでいいわけ?コックリの案に決まれば脱がされるのよ?」


「………コックリちゃんのためなら!」


「私の為にやってくれるなら、今後は過剰なスキンシップもやめてよね」


「それはイ~ヤ♪ぎゅうぅぅ♪」


「ぎゃあああぁ………」


「花ちゃん、私達は幽霊なんだから、幽霊らしい怖い感じで締めるのはどうかな?」


「悪くないわね。例えば?」


「ん~、あ!“次も見ないと呪っちゃうぞ~”とかは?」


「んー、なんていうか、私らしさが欲しいわね」


「花ちゃんらしさか~、花ちゃんと言えばトイレ……“トイレに引きずりこむわよ~”とか?」


「それだわ!」


「えへへ~、私また役に立ったよ~♪コックリちゃん」


「………」


「じゃあさ、私の場合だとどんな締めの言葉になるんだろ~?」


「あんたの怪談ってマスク外して追い回すってやつよね?」


「大雑把に言えばそうだけど、私、そんな事しないよ!ホントだよ!知らない内におしべが付いただけなんだよ!」


「それはどうでもいいわ。私だって有りもしないウワサ流されてるんだから、それと“おしべ”じゃなくて“尾ひれ”ね」


「“尾ひれ”だったか~。それで私の締めの言葉はなんになるの?」


「あんたのは……“脱いじゃうぞ♪”とか“脱いで追いかけ回しちゃうぞ♪”とかね」


「ヤダ~、そんな変態みたいなセリフ~。それになんで“外す”じゃなくて“脱いじゃう”って表現なの~、誤解されちゃうよ~」


「だったら、自分で考えなさい」


「む~、あ!そうだ!コックリちゃんのも考えようよ!」


「こいつには必要ないでしょ」


「そんな事ないよ~、コックリちゃんも締めの言葉欲しいよね~?」


「………」


 コクリッ


「ほら、コックリちゃん頷いた~」


「あんたね…」


「実は~もうすでに考えてあるのです!嬉しい?コックリちゃん」


「………」


「バンザイするくらい嬉しいんだ♪」


「もういいわ、早く言いなさい」


「えっとね、“次回も見なきゃ、つねるわよ”。これで決まりだよ~」


「本人はそれで納得するかしら?」


「それは大丈夫!私とコックリちゃんは通じ合ってるから私が言わなくても同じ答えになると思うよ。ね?コックリちゃん」


「………」


 コクリッ コクリッ


「ほら、すごく頷いてる♪」


「前々から思ってたけど、あんたのコックリへの感情は母性なの?それとも単に動物好きなだけ?」


「なに言ってるの?花ちゃん。これは“愛”だよ………あ、花ちゃん、コックリちゃん返して~」


「さすがの私も少し狂気を感じたわ。これ以上一緒に居させるとヤバそうだから没収よ」


「はっ!私はなんでこんな事に!?ちょっと!降ろしなさいよ」


「助けてあげたんだから暴れるんじゃないわよ」


「私はまたあいつに弄ばれてたの!?」


「そういう事よ。今日は特別、さっさと帰りなさい」


「そうさせてもらうわ」


 ポンッ


「あ~コックリちゃん…」


「今日はもうお開きよ」


「む~」


「ほら、せっかく考えた締めの言葉、披露するわよ」


「私も一緒に?」


「当たり前でしょ!」


「やった♪」


「じゃあ、行くわよ。次も見ないと…」


「トイレに引きずりこむわよ」

「トイレに引きずりこんじゃうぞ~」

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ぼくと花子さん @TaikibanseinoBonzin

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