掌の小説~行方知れず編~

吉太郎

第1話 行方知れずの行方

 僕は今、鬱蒼とした森に立っている。

 何をするでもなく、ただ立っている。

 目の前は真っ暗で、木々のざわめきと虫の声が聞こえる。

 ふと視線を下ろすと、そこには誰かが横たわっている。

 僕に背を向けて、少し背中を丸めて横たわっている。顔は見えない。

 歳は僕と同じくらい。小柄でTシャツに短パン姿。僕と服装も似ている。

 闇の奥から一筋の光が差す。その光のお陰で、僕は今森の開けたところに立っていた事が分かる。

 光は徐々に近づいてくる。

 その光はどうやらランプの光で、それを持っていたのは黒い帽子を被った男の人。その人は左手にスコップを持っている。

 その人は横たわった子の横にランプを置くと、スコップで地面を掘り始めた。

 ザッ・・ザッ・・ザッ・・ザッ・・・・・・。

 大体三十分くらいで人一人入れるくらいの穴が地面にぽっかりと空いている。

 帽子の人はスコップを地面に突き刺すと、両手で横たわってる子を抱きかかえる。

 そしてその子を地面の穴に放り込んだ。

 放り込まれる一瞬、その子の顔が見える。生気の無い目が開ききって、口から血とゲロが混ざったようなものが垂れている。

 ・・・・僕だ。その顔は、僕だ。その子は、僕だ。

 帽子の人は再度スコップを手に取って、今度は穴に土を入れ始める。

 やめて、ああ、やめて。視界が黒くなっていく。

 ザッ・・ザッ・・ザッ・・ザッ・・・・・・。

 あああああああああああああああああああああああああああ。

 目の前は真っ黒。体は冷たい。動けない。

 土越しに感じる男の足音。遠ざかっていく。

 やめてたすけてなんでくらいこわいどうしてなんで。



 

 僕を探して。

 

 

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