Blackbeard Crisis
介裕
第1話
目が覚めると、体を締め付ける縄で全身が圧迫されていることに気が付いた。
両手を後ろに回され、手首を縛られているのがまず最初の感覚。朧気な視界の先には、自分より何倍も巨大な化け物が何人も存在していた。
両手以外は、と意識を体の他の部位に向けたが、足首と太ももを縛られた感触で下半身の行動は一切の制限がされていることを理解した。
更に言えば、今自分の視界は平行だ。頭に血が上っている感覚や、変な重心がかかっている様子もない。間違いなく直立している。
しかし、身動きが取れない。何やら木製の箱に収められているようで、強制的に直立を矯正されているようだった。
意識はあっても、声が出せない。喋ろうとしても喉の感覚が無い状態だ。
困惑した様子の自分に対して、巨大な化け物が何やら言葉を発しているが、理解できない言語だ。
しかし、化け物の一人が持った、化け物にとっては小さな、自分にとっては巨大な刃物が俺に向けられた事で、背筋が凍る。
化け物は、かろうじて笑っている事がわかる声色で俺に向けて青い剣を突き出してきた。いや、正確には自分を固定している木箱に向けて突き刺す。
ガタガタと木箱を伝う衝撃の後、僅かな痛みが二の腕に発生した。刺された事を即座に認識し、顔が歪むと、剣を刺した化け物がニヤリと笑ったような気がした。
そして次に、その隣りに居たもう一体の化け物が、同じように、今度は赤い剣を刺す。
次はふとももに僅かばかり刺さった。二の腕にも太ももにも、数センチ刺さったことで、血がにじむ感覚を覚える。
そこから、また別の化け物が黄色の剣を刺したが、これはどこにも当たらず、どうやら脇腹をかすめた雰囲気を感じ取った。
俺が何の反応もしないと、怪物は声を荒らげて地面を叩く。揺らされた木箱が、その際横に倒れた。その時、木箱が人間一人を入れる樽である事を理解する。巨大な手によって再び元の状態に戻され、その後も何度も剣を樽に刺す化け物達から、全身に細かな傷と痛みを与えられる。
いたぶられ続ける体と、耳に残る化け物たちの嬌声と罵声で脳が揺さぶられ、意識も混濁してきた。
その瞬間が訪れる。
一人の怪物が差した剣が、自分の体ではなく、何かの仕掛けを差した音が、カチリと聴こえた。
瞬間的に、体に負荷がかかり、巨大な樽から上へ発射される。体は縛られたまま、何の抵抗もできず、浮き上がった全身の天地が返り、頭から地面へと落ちていく。美丈夫の象徴だった自慢の黒髭は、痛みに食いしばった際に出た血と涙でぐちゃぐちゃだなと、最後に剣を刺した化け物の歓喜の様子を目に焼き付けながら感じていた。
Blackbeard Crisis 介裕 @nebusyoku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます