あっ、ヤバい。

Asahi-Yuhi

命の線

──どっちかが正解。


 俺は、どっちを切ればいい?


 はぁ、なんでこんなことになったんだ?


──ノコリジュウビョウ残り十秒


ーー


 俺は、いつも通りに出勤して、スパイ任務をこなしていた。


 今日は、この会社にあるシステムを見に来ていた。


 ここのシステムが他会社のものを悪用しているだとか。


 とりあえず、これのコピーを取ればいいらしい。


 俺が、システムもコピーを取れたと思ったとき、ブザーが響いた。


──ブー


 その音の方向に向かうと爆弾があった。


 急いで部屋を出ようと思うと、ドアが閉まっていた。


 爆弾に設置されたタイマーには“ノコリサンジュウビョウ残り三十秒”と書かれている。


 ドアの鍵を俺が開けるとしたら、最低でも四十秒はかかる。


 なら、爆弾の解除の方が可能性がある。


 俺は忍ばせておいたナイフで慎重に線を切っていく。


 このスピードで行けば後十秒で終わる。


 そんなことを思ってタイマーを見ると、ノコリニジュウビョウ残り二十秒


 よし、これなら行ける。


 は?


 最後の一本がどっちかわからない。


 ドラマで見るような赤と青の二択ではなく、同じ黒の線が二つ。


 恐らく、どちらかを切れば爆発しないだろう。


──ノコリジュウビョウ残り十秒


 どっちを切ればいいんだ。


 俺が生き残らないと、俺がスパイだと言うことが世間に広まり、仲間に迷惑がかかる。


 分かっていても、どっちが正解か分からない。


──ノコリゴビョウ残り五秒


 仕方がない、いっそのこと両方切ろう。


 そう決意を固めて、俺は握る手に力を込める。


──ノコリイチビョウ残り一秒


──パチンッ


 そんな効果音と共に、爆弾は解除された。


 手の方にえ目を向けると、片方の線しか切れていなかった。


 俺は、安心して、疲れがドッと出る。


 そして、一言呟いた。


「俺の運良くて良かった~。これぞ、危機一髪だな」

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