勇ましき

ヨートロー

第1話 福音

 夜。


 あと少し、立ち止まるのが遅ければ死んでいただろう。


 最初、目の前に星が降ってきたんだと思った。

 あまりにも輝きををはなっていたから。


 無意識のうちに手を伸ばしていた。

 星を触りたかった。


 星は火の輝きなのだと、その時知った。


 朝。


 星は剣になっていた。

 地に突き立ち、日を浴びて煌めく。


 剣は災いを呼び寄せる。

 剣を求め、彼らは来た。


 剣の柄に触れる。

 まるで吸い付くかのように手になじみ、誰も抜けずにいたそれは抵抗なく抜けた。


 敵は寄越せと叫ぶ。剣は戦えと囁く。


 あらゆるものを拒み、消し去る。

 この世界の絶対だと言われ続けた存在を、剣は貪るように消していく。


 剣は導いた。

 勇ましき者として。








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勇ましき ヨートロー @naoki0119

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