夜空の星を

めいき~

そりゃー失敗するよねって

田舎の澄んだ空気が、満天のネオンを映し出す。


鈴と裕也が二人、空を見上げて。



丸太に、二人で腰掛けていた。




「鈴、ここまでありがとうな」


「何、言ってるんだよ」



二人で、召喚された異世界。特に魔法もチートも無く、それでも力を合わせてやってきた。


黄金の髪を揺らした鈴、ハーフの為に顔は日本人より。



最期の戦いを前に、真剣な顔の裕也が言った。




「もしさ、戦いが終わってまだ俺達が生きてたら。俺の嫁に、なってくれないか」



「それは出来ないよ、裕也」


悲しそうに星明りに照らされて、裕也の方をむいて。


はっきりと、拒絶の言葉を示し。



それは、昨日の事。

明らかに、動きの精彩を欠いていた。




「何やってんの、裕也!」


鈴の声が戦場に響く、ファンタズムの光が僅かに空は鳴り。


地は裂けて、ここが血煙上がる戦場のど真ん中。



僅かに、二合剣を当てただけなのに裕也の膝が落ちた。



「畜生!畜生っっ!!」



(何故だ、何故!)



思い出される昨日の言葉、君の嫁にはなれないよ。


悲しそうに、苦るしそうに絞り出すようにしていた声。



ずっと…、ずっと一緒に旅をしてきた。

ずっと…、ずっとこいつと一緒なら最後まで生きていけると思った。



「なのにっ、どうしてだよ!」



裕也の頭上に、敵の馬上からの槍がくり出され間一髪首をずらす事で躱し。

落ちた脚には矢が刺さって、動きが鈍っていく。



「俺の、何がいけなかったのか?」


そんな、自問自答を繰り返す。


汗で滲む剣のグリップ、流した血や周りの血などで鼻が曲がりそうだ。



「相方に告白して、しくって次の日死ぬとか洒落にならねぇっての」


そういいながら、長袖を歯でちぎって包帯にして止血する。


「いきなり、血は止まってくれねぇか」


朦朧とする、意識の中で言葉をこぼし。



吹きすさぶ、血風にかろうじて意識を繋ぎ止められ。


「生きたい、生きてまたあいつと旅をしたい。なんて思ってた俺がアホだったんかな」



遂には、崩れ落ちその瞬間に鈴の姿が見えた。




鈴が何か叫んでるな、なんだよそんな必死な顔して。




「ボクは男だ、男と結婚なんかできる訳ないだろう気持ち悪い奴だな!」



その瞬間、裕也の眼に光が戻る。



「あぁ…そうかい。そういう事だったのかい」


ゆらりと立ち上がって、鈴の方にゆっくりと歩き出して。


「俺が、嫌われた訳じゃないんだな?」


「こんだけ苦楽を共にしてきて、今更それをいう?」


「おーけーおーけーよく判った、そりゃ(嫁)にはなれねぇよなぁ」


「全く…、しっかりしてよ」



迷いをすてた裕也は、これまでの苦戦が嘘の様に馬の首ごと横に切り捨てて。


「力によって、貫かれる意地もある。俺は、この戦に勝って鈴と異世界旅行と決め込むんだよ!」


「改めて、告白するぜ鈴。俺の婿になってくれ!」



その後、戦場に響くビンタの音だけがその答え。




(おしまい)

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夜空の星を めいき~ @meikjy

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