第5話 《ムネヒラの秘密》
アガサはその日、ムネヒラの鞘に隠されていた丁寧に小さく織り込まれた油紙を見つけていた。
油紙は二枚あった。
一つは、全く解読が出来ない文字であったが、もう一つはこの大陸のほとんどの地域で使われていた古い言葉だった。
ムネヒラを作った人物と思われるものだった。
それにはこうあった。
『我ら一族は、大陸の東、
だがこの地方は、魔族が多く一族の犠牲者も出た。
我が一族の技術、そして子孫の繁栄のためにも、私の父と叔父の兄弟を村の外に出して未来を託したのだ。
私の父は、大山脈の麓に良い鉄の採れる山を見つけて、付近の村に頭を下げて、住まわせてくれるように頼んだのだそうだ。
弟の
父は、村の娘と結婚し、私を含めて五人の父となった。
が、みな幼い時に亡くなったり、魔族に襲われたりと残った子供は、私一人だった。
父は、私が陶国式の鍛冶の技術をすべて覚えると、安心したように亡くなり、私も所帯を持って一人息子が生まれた頃――
なんと、叔父が数十年ぶりに帰ってきた。
驚いたことに、叔父は全く老けておらずこの数十年間は、北の魔族の巣にいたのだと言う。
そして恐ろしいことも言った。
我が子孫の中に魔族となる者が出るだろうと……
私は、今私の鍛冶小屋で遊んでいる息子の事が心配でならない。
だから、旅の途中で拾った炎華石で刀を作ろうと思う。
これは、魔族を滅するための刀だ。
そして正義感の強かった父の名を与えることにする、
決して人を傷つけてはいけない。
我が
人を害するように造り替えようとすれば、天罰が下るだろう』
頭の良いアガサには、文字の規則性で読み解くことが出来てしまった。
そして思った。
「しまったかな?」
その時に、レスターが入って来たので、アガサは油紙を元の隠し場所に戻して、ムネヒラをレスターに返却した。
その後、直ぐにレスターは、山を下りて行った。
ムネヒラをレスターに渡せて安心してお茶を入れていた時だった。
急に、ムネヒラの炎華石が目の前に現れたのだ。
だが、アガサにはそれ以上の記憶は残っていない。
身体も記憶も木っ端微塵に吹き飛ばされたのだ。
(完)
紅蓮の剣士、レスター 月杜円香 @erisax
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