危機一髪と言いますか……

九十九 千尋

いやぁ、締め切りは強敵でしたね


 まず初めに神は「光あれ」と言おうとしてくしゃみをした。

 神は花粉症だったのだ……


 などと、作品の下書きを夢想する十日、水曜日の午後。

 「カクヨムWeb小説短編賞2023」という、ある種のカクヨムでのお祭りに参加するつもりで変な話を僕は考えていた。


 僕、九十九つくも 千尋ちひろはその日の連載作品の更新を終え、悠々と構えていた。ついでに連載作品の次のエピソードとか考えちゃってりしちゃったりして。すなわち余裕の構えであったのだ。

 しかして、丁度遊んでいるゲームのソーシャルネットワークゲームで、協力イベントがあったこともあり、物語の下書きを想像するだけで、出力はしなかったのだ。


 元々筆が遅く、ついでにプロットとか書かない方が何だか色々キャラクターが暴れてくれて、勝手に知らない伏線が張られていいなぁ、という、三流逆によくあるノープランでの執筆が遅い僕ではあるのだが、特に今回は余裕、否、油断の構えであった。

 というのも、過去のカクヨムコンでは締め切りはお題発表から二十四時間である。一日の間に約三千字ほどの短編を、お題に合わせて書き上げる。即座にお話を考える練習になり、同じようにカクヨムコンに参加した人との間でつながりもできる。良い企画なので、参加できそうであれば片っ端から参加していたものである。

(え? 直前のは参加し忘れたよね、って? 気が付いた時には二日目だったねん)

 そんなわけで、今回の「カクヨムWeb小説短編賞2023」にも参加することにしたのだが、今回は締め切りまでおよそ二日、四十八時間が設けられ、特に文字数制限が倍以上の一万字である。物語を描いた後に削らねばならないタイプで、しかも執筆が遅い物書きである僕にとってはこれは美味しい設定であった。


 結果、十一日、木曜日の午後になっても執筆しなかったのである。

 本来であれば、日々の連載の関係で、最近日課になっている「午前中は窓を開けて日光浴しながら執筆」という作業と共に十二日締め切りの作品に手を付けるはずであった。

 だが、寝坊s、やんごとなき理由により午前中の執筆時間は霧散したのだ! おのれやんごとなき! ……はい。

 しかしこの時は「まあ、午後に書けばええなぁ」と思っていたのである。



 が



 風雲急を告げる。

 午後、パソコンを立ち上げると、「窓のアップデートできるで。再起動ヨロ」とパソコンに通知が入って来たのでこれを快諾。まあ、数分で終わるだろ。と構えたのだが……


 アップデートが、終わらない!!


 そう、何が悪いのかどうしたことか、パソコンは新しい通知を出して来たのだ。


「アプデ失敗したで」


 えぇぇぇええええ!?

 何故にWhy??


 エラーコードを調べてみるに「こいつぁ、ハードディスクの故障かもしれませんなぁ」とのこと。ひぇっ……

 心底肝が冷え、パソコンを失った未来を想像して悶々と、鬱鬱としながらアップデート失敗の解決手段を探ること数時間。晩御飯を食べ逃してまでずっと調べ続け、コマンドプロンプトを触りながら調べ、スキャンし、ついでにスキャンの待ち時間で古戦場を回し、コマンドプロンプトのスキャンは一つの答えをはじき出した。


「どこも悪くないで。アプデできるんちゃう?」


 お、そうかそうか。良かった良かった。

 これで万事解決だ! と思ったのは午後の二十時。今日の更新は無理だな、と近況ノートに謝罪を投稿。

 じゃ、アプデの更新をぽちっと……


















「更新、失敗したで」


















 ほんまか駆動!?

 せやかて駆動!!

 プロンプトはどこも問題ない言ってたで!?


 ここで、最悪の考えが脳裏を過ぎる。

 つまり、故障をパソコンが自己判断できないレベル、という故障……それしか、考えられない。


 思わず夜中の二十一時に声が出る。

 ど、どどどどd、どないしたら、もちつもちもちもちもちけつ、落ち着いて居られるかああああああ!!


 が、ある記事に行き当たる。



「ごめんやけど、アプデファイルデカすぎて、エラー発生するやもしれんわ」



 という、「小型やわらか」という某会社が記事を掲載。

 いや、でもその場合は別のエラーコードが出るんじゃ……

 記事にはこんな感じのことが書かれていた。



「重ねて悪いんやけど、その場合はエラーコードで『ハードディスク壊れとるやもしれんわ』って言うと思うで」



 ……なんやて駆動!?

 ずばり、ずばりであったのです……

 つまり、うちのパソは、パソ子さんのハードディスクは、無事ということになります!!(プロンプトで調べて異常なしって出てたのは正しかったのなら、ということですが)



 いやぁ、大変だった。疲れたから、今日は寝よかな。連載休む近況書いたし、寝よ寝よ……
















  スヤァ……
















 スヤァ?


















 ちげぇ!!

 「カクヨムWeb小説短編賞2023」の作品真っ白やんけ!!!!


 そう、作品がまだ欠片も出力されていなかったのである。

 しかし、疲れた頭では作品の構想は浮かばない。ってかなんだよ、花粉症の神による世界創造って。叱られるわ。


 いや、当初は、そうして花粉症の神のくしゃみが元で、世界に満ちた人々にも神の一部が云々。しかしてくしゃみと同時に世界に疫病がどうのこうの。しかるに始まりはしたが始まりでしかないのだとか言ってみちゃったりして……

 まあ、その作品は書かなかったんですけどね!!



 何を思ったのか、九十九は締め切り当日、十二日の午前九時より執筆を開始。しかも、直前まで考えていた構想を全てかなぐり捨て、その場で思いついた新作を書き上げたのだ。

 ところが、九十九は執筆速度が、遅い……およそ三時間で一万字は、僕では圧倒的に速さが足りない!! でも書く時は色々こだわっちゃう! 無駄に書きながら推古も同時にしちゃう!! もうやめて! このままじゃ締め切りに間に合わなくなっちゃう!!




 そして、作品を仕上げた時間は、締めきりである十二時よりだいぶ遅れて、十二時三十三分……遅刻である。

 締め切りに遅れてしまえば元も子もなし。嗚呼、無常。








 だが、締め切り時間までに作品を公開さえしていれば、応募規定には即している!

 それを計算してかせずか、いや計算してなかったんだけども、作品を前編後編に分割し、前編だけ早めに公開したのだ!! これで応募時間内に作品そのものは公開される!!

 結果として、後編を、作品としてピリオドを打ったのは時間外ではあったものの、いやはやまさに危機一髪。間に合えば良かろうナノダ!!


 というわけで、僕は悠々と昼ごはんの豚汁にニンニクのチューブなんか絞ったりしちゃって、ついでに納豆ご飯に舌鼓を打ってご機嫌なお昼ご飯を食べたのでした。


 かくして、現代異能バトル物に恋愛要素を混ぜて、得意の人間模様の様を加えた短編

「真昼の星の子」は公開されたのです。

 ↓あ、こちらURLです。花粉症の神は残念ながら出ません。

https://kakuyomu.jp/works/16818023211744279851


 めでたしめでたし……
















 じゃなかったんですよ。

 カクヨムWeb小説短編賞2023には決まりがありまして……

「作品公開するなら『短編賞創作フェス』ってタグ、付けてくださいね」という公式のお達しに気付いたのは……十三時三十分




 ギリギリどころか足りてない!! ああ!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

危機一髪と言いますか…… 九十九 千尋 @tsukuhi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ