05-00 俺の決断

 異空間にいる唯男ただおは見慣れた自宅の一室にいた。

 そこに、もう1人の唯男がパソコンと向き合っている。日課である掲示板の同士とコミュニケーションを取っていた。

 もう1人の唯男はお金持ちアピールして、偽りの自分を自慢している。あれやこれやと同士に言われながら言葉を交わす。


『ここのタイムスタンプはなんなの?』


 MCは普通の光景に拍子抜けしたようだ。緊迫感漂う重要な場面に出くわすと思っていたのだろう。

 唯男は1人掛けのソファに座った。


『ここがすべての始まりだよ』


『……』


 MCはどういう意味か考えるも、その口が答えを告げるまでには至らなかった。


『MC、ここでやり直したい』


 唯男は猫背でクスクスと笑うもう1人の自分を見つめながら言う。


『もう選ぶ道は決まってるみたいだね』


『ああ』


『それじゃ、ここでお別れだ。唯男君』


『プレゼントをありがとう。MC』


『礼ならいいさ。最初に言っただろ。利害が一致しただけだよ』


『そうだな……』


 唯男は微笑する。


『幸運を祈ってるよ。唯男君』


 その言葉を最後に、唯男の意識が少しずつぼやけていった。



 唯男はまばたきをした。

 頭がぼんやりする。

 自分の頬を触ると、体温が指先を伝った。

 戻ってきたと実感する。

 MCと話してきた記憶も覚えていた。

 唯男は掲示板を閉じ、SNSを開いた。

 あんなというアカウントからメッセージが届いていた。話し相手を募集しているそうだ。唯男はあんなのアカウントネームの横にあるメニューを開き、ブロックをクリックした。

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人生オワタ俺は一度だけ;Re.やり直せるらしい 國灯闇一 @w8quintedseven

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