大学入学共通テストが間もなくスタート

第1話

　明日1月13日から大学入学共通テストが始まります。この時期は受験生を狙った犯罪が急増しますので、注意喚起の意味で昔話を投稿します。

　受験会場へ急ぐ私を呼び留める金髪で髭面のオッサンがいました。今日の試験問題があるから買わないかと小声で話してきたのです。男が言うには、上級国民の子供の秘密裏に渡される試験問題が流出したもので、これさえあれば誰でも高得点が取れ上級国民の仲間入りができるとのことでした。

　信じられない話なので、私は断りました。男の言うことが仮に事実だとしても、拒絶するのは当然のことです。そんな汚い真似をしてまで良い点を取りたくないと言い切る私に、男は言います。

「これは特別なんや。十万で良い、いや、五万……ええい、奮発して一万円でドヤ！」

　私は男を相手にせず、立ち去りました。その時は、それで良かったと思ったのですが……今は後悔しています。私自身が上級国民の仲間入りをして見聞きした事実を総合した結果、あの男の話が真実だったと確信を持って言えるようになったからです。

　あの試験問題があれば、私はもっと楽に上流階級の仲間入りができていたでしょう。

　上流階級の世界へ入るためには試験で高得点を取る以外の方法は確かにあります。ですが、それには大変な苦労が伴います。流出した試験問題さえ手に入れば、華やかな世界へのチケットを獲得したと同じことなのです。

　社交界デビューするために私がした辛酸を、若い人たちに味わわせたくありません。しかし、どんなに困難な道でも上流階級に入りたいと願う若人はいることでしょう。その気持ちが分かります。私も、そうでしたから。

　ですから今回、私が入手した試験問題を特別にお譲りしたいと思います。本稿をお読みの方だけに、極秘でお渡しします。ナンバー不揃いで、使用済みの一万円札百枚、合計百万円を持参のうえ、下記の住所へいらして下さい。部数の限りがございますので、お早目に。それと、この件は絶対に口外なさらないよう、お願い致します。