あなた達にはこれからデスゲームを始めて貰います。先ずはカレー作りを始めましょう。
黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)
デスゲームってこんなに殺伐と無縁だったっけ?
『これからあなた達にはデスゲームをして貰います。』
私達を誘拐した目出し帽の何者かがモニター越しにそう言った。
『デスゲーム』
人々に命がけの遊戯を強制し、その命を弄ぶ卑劣なもの。血みどろで悪意に満ちたそれに巻き込まれたのに、私は醒めていた。
私の死を悲しむ人なんてもういない。私の死を望む人間はいっぱいいる。そして私はそれが疲れた。
そして、何より私はこの死が近付いてくるこの刺激的な瞬間が物凄く楽しい。
もう、どうでもいい。
シャンデリアのあるパーティーでも出来そうな大きな部屋。その場所に一緒に誘拐された皆が居た。動揺している様子は無い。
大人の顔をこっそり見ている子ども。骨と皮ばかりのおばあさん。私と同じ位の女子、多分高校生。気の弱そうな疲れ切ったサラリーマン。30歳くらいの女の人。若い男の人。
全員、明らかに訳ありっぽい。
『あなた達一人一人に部屋を用意しました。どうぞ、そちらに荷物を置いて下さい。
終わりましたら、またこの場所にお戻り下さい。』
モニターはそう言って切れた。
窓の外に見えるのは山、山、山。どれもこれも学生服で踏破出来る様な高さじゃない。
窓には鉄格子、壊せそうもない。
見える風景の何処にも場所を特定できるようなものはない。
そして……
ふかふかのベッド。部屋の雰囲気に合わせた木目調の冷蔵庫、中には美味しそうな菓子、紅茶とコーヒーにココア。最新型のPCに周辺機器。テレビがあって冷暖房完備。
豪華なホテルの一室にしか見えない。悍ましいデスゲームの対比だとしたら、悪趣味過ぎて笑える。
さて、この後どんなデスゲームが待っているのかな?
私が7人目、最後だった。
それをどこからか見ていたのか、モニターがまた光った。
『皆様、集まったようですね。おや、もう正午ですか……』
わざとらしく手にしているであろう時計を見る。一体何をするのやら……
『丁度良い時間ですね。では、皆さんにはまず……カレーを作って貰います。』
へぇ、カレーね。
え?
『驚くのも無理はないでしょう。シチューではなくカレーですからね。』
え、そこなの?
いや、多分これは毒を入れる機会を作って自分達で殺し合えという……
『肉も野菜も新鮮なものを用意しています。あ、ルーは辛口、中辛、甘口と用意してありますよ。ご安心を。』
どこからともなく肉と野菜とカレールー、キッチンが出てきた。しかも食材は全部包丁が必要ないように一口サイズにカットされていた。
あ、これ完全にデスゲーム要素排除するやつだ……
その後、なんやかんやでカレーが出来て、自己紹介もしていない皆でカレーをテーブルに並べて椅子に座る直前に、事件は起きた。
『カレーが出来ましたね。では、面白い事を始めましょう。
皆様のイス裏に貼ってある封筒をご覧下さい。』
来た。
指示通りにイス裏を見てみると茶色の封筒。そして中に何か入っていた。
『封筒の中身をご覧下さい。』
中身を除くとそこには茶色の細長いカプセル・白い錠剤・何かの植物が描かれたカードが一枚ずつ入っていた。
三すくみ?それともカードの収集?それとも……
『皆さんにはウインナー、ゆで卵、ほうれん草でカレーをトッピングしてもらいます。』
あー、茶色いカプセルじゃなくてこれウインナーで、白い錠剤じゃなくてゆで卵で、これ緑はほうれん草か……え?
デスゲーム、何処?
あなた達にはこれからデスゲームを始めて貰います。先ずはカレー作りを始めましょう。 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika
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