【一話完結】僕は自分の力で、小説を書きたいんだ!
久坂裕介
第一話
「はあ……」と僕は思わず、ため息をついた。当然だ、僕が書いた小説は十話まで公開したが、★が一つも付かないからだ。やっぱり
僕は小説投稿サイト、『
それに、現実的な問題もある。僕は今、ニートだ。大学を卒業して就職したものの、そこはいわゆるブラック企業だった。長時間の残業、休日出勤は当たり前、だが残業代などは出なかった。それに上司がすぐに怒る人でパワハラも当り前で、僕はたまらず三ヵ月で会社を
とは言え、このままでは……。『WriteアンドRead』では異世界ファンタジーは、人気のジャンルだ。読む人も、多い。だからたくさんの作家さんが、異世界ファンタジーの小説を書いている。しかし数が多すぎるので、
そう思いながら『WriteアンドRead』で公開されている小説を読んでいると、あることに気づいた。それは、
すると僕は、ふと考えた。AIに小説を書いてもらったら、どうだろう?
そうだ、AIに売れる小説を書いてもらったら、と考えたが
でも、更に考えた。でもちょっと、
その答えは、『魔王に転生した俺。世界征服とかめんどくさいから、仲間のモンスターとダンジョンでほのぼの暮らす様子を
何だこれ……。確かに配信とか最近、流行っているワードは入っているけど……。でももし書いたら、僕が今までに書いていない小説には、なりそうだ。
そして僕は、考えた。このタイトルの小説の、第一話を。だがいくら考えても、ぜんぜん思いつかなかった。なので、対話型AIに質問してみた。『魔王に転生した俺。世界征服とか、めんどくさいから仲間のモンスターとほのぼの暮らす様子を配信してバズりたい! の第一話は?』と。すると一分後に、約二千文字の第一話が表示された。読んでみたら結構、
すると、
その頃『WriteアンドRead』では年に一度の、大コンテストが
すると僕の小説は、見事に大賞を取った。『今までに無い、
「何でも、好きな物を食べてください」と言われたので僕は、マグロとサーモンを注文した。だが食べ終わると、「はははは。もっと高い物を、食べてもいいんですよ」と言われたので、僕は大トロを注文して食べた。やはり、
食べ終わると高橋さんは、
「とにかく、第一巻が大事です。それが売れなかったら、次はありません。なので、がんばりましょう。『魔王に転生した俺。世界征服とか、めんどくさいから仲間のモンスターとほのぼの暮らす様子を配信してバズりたい!』を、人気作にしましょう」
僕はプレッシャーを感じながらも、「はい」と
「普通、新人さんの第一巻目は、いろいろ直すんですけど、この作品に関しては直すところはありません。このまま、行きましょう」
こうして僕の小説は、書籍化された。発売された第一巻を本屋で見つけた時は
『おめでとうございます! 第一巻の
僕は、『ほっ』としながらも喜んだ。増版か……。よし、第二巻も、がんばるぞ! そして出版された第二巻も、
当然第五巻も、出版されることになった。僕は今まで通り対話型AIに、小説を書かせていた。すると高橋さんから、よほどのことがない限りかかってこない電話がきた。緊張しながら出てみると、やはり、良い知らせだった。
『おめでとうございます! 斎藤さんの作品が、アニメ化されます! 早速で申し訳ないんですが、第五巻のあらすじを早めにメールで送ってください』
だがその
でも僕は、
第五巻のあらすじを考えた僕は、それを高橋さんにメールで送った。すると少しすると高橋さんから、電話がきた。なので僕は、期待した。アニメ化以上のニュースを。たとえば本屋さんの店員が売りたい本を決める、『ブックス大賞』で一位を取ったとか? そうすれば僕の小説はもっと注目されて売れて、アニメ化にも
『斎藤さん、ふざけないでくださいよ! あらすじを読んだんですが全然、面白くありませんよ!』
僕は、少しうろたえながらも説明した。
『いや、魔王が勇者とフォロワー数を
『いや、全然、面白くありませんよ! 今さら勇者が出てきても。魔王がモンスターと、ほのぼの暮らしているから面白いんですよ!』
僕は、大きなショックを受けた。そうか、僕が考えたあらすじは、面白くないのか……。でも僕はもう、対話型AIに小説を書かせる気は無かった。僕は僕が考えたアイディアで、小説を書きたかった。なぜなら評価されているのは対話型AIで、僕ではなかったからだ。僕は、僕自身が書いた小説を評価してもらいたかった。僕の才能を、評価してもらいたかった。僕は自分の力で、小説を書きたかった。
だから僕は高橋さんに、本当のことを話した。今までの小説は、対話型AIに書かせていたと。すると高橋さんは、あっさりと言い切った。
『それじゃあこれからも、対話型AIに作品を書かせてください。ウチは人間が書いた売れない作品より、対話型AIが書いた売れる作品を売ります』と。
僕の中で、何かが切れた。ダメだ、僕はもう高橋さんとは、仕事をしたくない。気が付くと僕は、無言で電話を切っていた。それから何度も高橋さんから電話がかかってきたが、僕は無視した。『WriteアンドRead』も、
でも僕は、気付くと小説を読んでいた。勇者が魔王を倒す、
そして僕は再び、『WriteアンドRead』にユーザー登録した。もちろん、ペンネームを変えて。そして、公開し始めた。勇者が魔王を倒す、王道の小説を。でも僕は、ちょっと
なぜ魔王は世界を征服しようとするのか、モンスターは
書籍化した時よりもアニメ化が決まった時よりも、僕は喜んだ。そして第十一話を書き始めた。
完結
【一話完結】僕は自分の力で、小説を書きたいんだ! 久坂裕介 @cbrate
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