オリザに新しいお友だちが出来たよ!!
わん!! 私の名前はオリザ。おりこうなわんこを目指して日夜努力しているんだよ。何でって? それは新しいご主人様が出来たからなんだ。
それと新しいおうちでいっしょに暮らせる幸せ!! ふかふかのベッドもすぐに私のお気に入りになった。
ずっとお布団にくるまれて寝ていたいけど、なぜかお部屋にみんなが勢ぞろいしてオリザについてのお話しをしている。難しいことはよくわかんないけど、ご主人様と同じベッドで眠るのはだめみたい。なんでだろう? 人間の考えることは子犬の私には理解出来ないな。オリザがメスだからだめなのかなぁ……。
ご主人様の妹、
天音のお部屋は隣に建っている広いお家の中にあった。借りてきた猫、ならぬ子犬状態の私に彼女はとっても優しくしてくれた。みんなでおいしいごちそうを食べた後なのに、これは別腹だからと言いながらお菓子を用意してくれたり、すぐに天音とはお友達になれた。部屋では私と面白い遊びもしてくれたよ!!
「オリザちゃん、ちょっと動かないでね。天音がいい物を作ってあげる」
天音はオリザの身体のいろんな部分に長いひもをあてたりしてくれた。首のまわりにひもを巻きつけるのはかなりくすぐったかったけど動かずに我慢した。
「……よし、寸法は測ったからオリザちゃん、私についてきてくれる」
「わん、天音、どこにいくの?」
「いいから私に着いてきて」
天音といっしょに別の部屋に移動する。その場所に一歩足を踏み入れた私は驚いてしまった。
「わあっ、すごい!! 見たことのない機械がいっぱいのお部屋だ。きれいな布もあるね、これは全部天音の物なの?」
「そうだよ。私ご自慢の裁縫部屋なんだ。オリザちゃんへの歓迎をさせてほしいの。あなたにお洋服をプレゼントしたいんだ。さっき全身の採寸をしていたのはそのためなの」
「私への歓迎って!? 天音はどうしてそんなに優しいの……」
天音からの予想外の申し出に私はとても嬉しくなってしまった。その反面、切ない気持ちが胸にこみ上げてくる。私はここにいていいんだ。
どうしてそんなことを思ったのか自分でもよくわからない。不意に涙が出そうになるのを必死にこらえる。
「……オリザちゃん、笑わないで聞いてね。これは私の夢だったんだ。宣人お兄ちゃんには言ってないけど、昔可愛がっていた愛犬に首輪やお散歩用のリードを作ってあげたかったんだけど、そのころの私には無理だったの。お裁縫も絶望的に下手でね」
「オリザの前にも先輩のわんこがいたんだね」
「うん、宣人お兄ちゃんといっしょに可愛がっていたよ。とってもおりこうなワンちゃんでね、家族同然だったの……」
「天音、オリザもおりこうさんってみんなから言われるように頑張る!!」
「ふふっ、そうだね。最初はびっくりしたけどオリザちゃんがうちに来てくれて本当に良かった……」
「そうなの、迷惑じゃなかった?」
「迷惑なんかじゃないよ。宣人お兄ちゃんのためにもあなたが来てくれて絶対に良かったと思うから」
「んっ、ご主人様のため?」
「あっ、何でもないから気にしないで!! それよりオリザちゃんは何色が好きかな。首輪はさすがに問題がありそうだから、お散歩リードを最初に作るから色を選んで貰いたいの」
「本当に!! じゃあこの中の色全部がいいな」
「ええっ、全部の色って!? オリザちゃんはカラフルな色が好みなんだね。いいよ、それで作ったげる」
「わん!! 天音、とっても嬉しいよ。大好き!!」
「きゃははっ、オリザちゃん、急に抱きつかないで!! くすぐったいから」
「あっ、ごめんなさい。つい嬉しすぎて天音に飛びついちゃった」
「じゃあ、隣に座って私の助手をしてくれる」
「天音、特等席だぁ!!」
「オリザちゃんはそういう言葉を知っているのね、お父さんのいうとおりかもしれない……」
天音のつぶやいた言葉の意味はよくわかんないけど、そのときの私はミシンに囲まれてテンションが爆上がりしていたんだ。
いったいどんな仕上がりになるんだろう? お空にかかる虹みたいだったらいいな。
いつかみた雨上がりの青空にかかる大きなアーチ。七色の虹を思い浮かべて私は嬉しくなった。
お散歩用のカラフルなリード!! 街路樹の立ち並ぶ遊歩道を一緒に歩く姿を夢想した。
『……わん、ご主人様とはじめてのお散歩!! 嬉しいな』
隣には歩きながら私を見つめる優しそうな笑顔。はしゃいだ私をたしなめる。
『オリザ、僕からあんまり離れるなよ』
お散歩リードがご主人様と私をつなぐ絆みたいになるといいな……。
次回に続く。
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