寝坊したご主人様を起こしちゃうぞ!!

 吐く息が凍りそうなほど寒い朝だ。私は布団から這いだして寝返りを打つ。毛布が頬にふれる感触が心地よい 


 んしょ、よいしょ、ふうっ今日も元気だ。空気がとてもおいしく感じる。部屋の中は寒いけどお散歩にいく時間だ。私の体内時計は正確だから決まった時間に自然と目が覚めちゃうの。


 うひゃあ!? 急に身体全体が揺さぶられてしまった。いっしょのベッドで寝ていたご主人様が寝返りを打ったんだ。まるでみのむしみたいに布団を身体に巻き付けている。まだまだ起きないつもりかな。お弁当の用意をするっていってなかったっけ?


「……おはよう、ご主人様。あれっ、まだ寝てるのかな? よしオリザが起こしちゃおう。まずはこれだ!!」


 ぎゅう。布団の上からオリザの身体全体でのし掛かってみる。どうだ重いでしょう。だんだんと苦しくなってご主人様は飛び起きるかな?


 むうっ、ぜんぜん起きる気配がない……。それどころかまた寝返りを打ってさらに布団と一体になっている。


 今朝のご主人様はしぶといな。


 じゃあお次はこれだよ!!


 すまきみたいになった布団のはしからお耳が出ているのを見落としていないから。


 ふうっ、ふうううっ!! 息をかけちゃおう。これでどうだ?


 うふふ、効いたかも。ぶるぶるしてきたな。布団にくるまった身体が震えている。


 まるでオリザみたいだ。私もよく身体全体をぶるぶるさせて気分転換するんだ。これはわんこの習性だよ。人間のご主人様はお耳に息を吹きかけられてくすぐったいんだろうけど。


 早くお散歩、お散歩!! 心の中で節回しみたいに繰り返す。わんわん、吠えたりはしない。だって私はおりこうなわんこを目指しているから近所迷惑はしないと決めたんだ。


 じゃあ最後の仕上げに移っちゃうぞ。まずはご主人様の上に馬乗りになって。ぐいぐい身体を押しつけちゃうの。ほら苦しくなってお顔を布団から出した。


 いまがチャンスだ!!


 お顔をぺろぺろしちゃおう。まずはお鼻だ。


「うわっ、な、何なんだよ!? 僕の顔を舐めるのはやめろ!!」


 あれっ、最初から飛び起きちゃった。思ったよりも早いな。私はご主人様のほっぺたも狙っていたのに。つまんないな。


「オリザ、起こすときは顔を舐めるなって約束しただろう。僕は身体に触れられるのが大の苦手なんだからさ」


「でもオリザはご主人様とくっついていたいんだ。だって気持ちいいんだもん」


「まあ、オリザは犬だから仕方がないか……」


「わん、犬だから仕方がない!! だからもっとお顔を舐めさせて」


「こらぁ!! オリザ調子に乗るんじゃない。お散歩に連れて行ってやんないぞ」


「……それは困るの。お散歩したいからおりこうさんにする」


「すぐにやめるのが偉いな、オリザは」


「そうだよ、オリザはおりこうさんだから」


「よし、外は寒そうだから厚着して出かけるぞ」


「はいっ!! ご主人様。オリザのお散歩バックも忘れないでね」


 庭に面した窓のカーテンを開ける。朝日がとってもきれいだ。今日もお散歩びよりだな。どこに連れて行って貰おうか。スーパーマーケットのある大通り。それとも走り回れる運動公園。全部行きたいくらい!!


 天音が作ってくれたカラフルなリードを着けて貰ったら準備完了だ。さあ出かけよう。


「オリザは今日も元気です。お散歩に連れて行ってくれるご主人様が大好き!!」


 こんな幸せな毎日がずっと続いたらいいのにな……。

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