第7話 花子の能力

 鏑木は満足していた。


 昨日の大男との戦いは花子の評価を上げるものだった。


 なぜならいつもと違い警察からの依頼だったからだ。


 あの大男は、いや、あの魔妖は魔妖ハンターの使う魔妖を殺し、武装警官1人を重症にして逃走したお尋ね者の魔妖だった。魔妖ハンターが失敗したときには通常ならそのまま警察側の獲物となるが、今回は最近活躍しつつある花子の実力を試すために、討伐依頼が回ってきたのだ。


 失敗すればすべてを失うのだが、上を目指している鏑木はためらわずに引き受けたのだった。


 結果は大成功。はらわたがズレたんじゃないかというような強烈なパンチを2発食らっていたが、花子に異常は見られなかった。花子的には大したパンチでもないからわざと受け止めて相手の腕を奪ったらしい。


 これで花子の強さもある程度あることがわかったのでいい仕事が回ってくることもあるだろう。


 とはいうもののメインは今まで通りタレコミから始まるものになるのだが。


「お前に遠距離攻撃があったら結構上位の魔妖と肩を並べるんじゃないか?」


 機嫌がいい鏑木は珍しく花子に話しかけた。


「そんな魔妖を見たことはない。口から体液を3メートルぐらい飛ばしてくるのがいるぐらい」


「体液浴びるとどうなるんだ?」


「相手を溶かす能力だけど実際はそこまで強くはなくて火傷するぐらい」


「ふーん、相手の能力を奪う能力って倒さなきゃ奪えないのか?」


「瀕死にすれば奪えるかも」


 なかなか簡単に花子を強くすることはできないようだ。


 花子の触れたものを爆発させる能力は日本のトップクラスのハンターが使役している魔妖も使っているのをテレビで見たことがある。最もあっちは一発で魔妖を吹き飛ばす威力だったが。


「手っ取り早くお前を強くする方法はないのかねぇ」


「山に潜伏している魔妖を狩りまくってこようか?」


「それは不法侵入になる可能性があるからダメだな」


 魔妖に関しては法律が追いついていなかった。所有者がいる場合は許可が必要なのだ。魔妖が潜伏しているのが証明できれば誰かの土地であっても国や自治体の許可が出るし、所有者も文句を言うことはできない。しかしその証明が難しいのは言うまでもない。

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魔妖探偵事務所やってます 牡蠣一 @KaKiHaJiMe

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