第6話 日常
そんなこんなで花子とコンビを組んでから一年以上が経過した。。
鏑木は花子のやることに干渉はしなかった。というか興味を持たなかった。
花子は初めての魔妖の討伐で得た報酬のほとんどをゲームセンターで使い込んだようだった。2回目の討伐ではゲーム機を買ってきた。電源を入れればゲームができると思っていたらしく、ゲームソフトを買っていなかった。仕方がないので鏑木は花子にゲーム機の使い方を教えた。
本を買ってくることもあった。しかしジャンルがバラバラだった。それどころか上中下巻とあるのに中巻だけ買ってきたり、漫画の本だと9~11巻だけ買ってきたりとか変な買い方をしていた。暇な時に本を借りて読んだりしたが、前後の話が気になって仕方がないので鏑木が買い揃えた。これが花子の買い揃えさせる策略だったら恐ろしい魔妖だ。
ファッションセンスもおかしい。地味な柄の長袖のシャツにミニスカートなのはまだ許せるが、下着がサラシに
鏑木が花子といるのを嫌がっているのを薄々感じているのか、花子も必要以上に鏑木に話しかけてくることはなかった。正直、パートナーとして良好な関係を築けているとは言えなかった。
ただ、花子の仕事ぶりは評価できた。花子が強いのか相手が弱いのか分からないが、大きな怪我もなく確実に魔妖を仕留めた。勝てないと思ったら逃げろと言ってはある。失敗なら報酬が出ないだけで次のチャンスは有るし、武装警官が待機しているので討伐に失敗した魔妖はその場で仕留められる。近隣の住民に被害が出ることもない。
「花子、お前戦うとき魔妖にならないな。なんでだ? 力を温存でもしているのか?」
鏑木は花子にいつも感じていた疑問を投げかけた。
「なんだか魔妖に戻れなくなった。この体と相性がいいのかもしれない」
花子が答えた。
「えっ? 相性がいいとかあるのか? お前が戦った人間化した魔妖は全部戦いのとき魔妖の姿になったよな?」
「ん? そうだったかも。もしかしたら能力を吸収する力と関係するのかも」
「えっ? 能力を吸収? ……なんだそれ?」
鏑木は珍しく花子の言う事に興味を持った。
「私は能力を吸収できる」
花子の回答はいつもの要領を得ない回答になった。説明が足りないのでよくわからない。いつもなら面倒なのでわかったフリで会話を終わらせるが、鏑木は能力の吸収というのが気になった。
「一体何の能力を吸収できるんだ?」
「倒した魔妖とか……」
「今まで倒した魔妖から能力を吸収していたのか? そんな素振りは見えなかったが」
「お前と協力するようになってから倒した魔妖からは吸収したことはない」
「なぜだ?」
「たいした能力を持っていない」
つまり吸収するほどの能力を持っていなかったということか。
「どの魔妖でも吸収する能力を持っているのか?」
「……たぶん、ない」
花子は自信がないのか言い淀んだ。
「わからないのか?」
「他の魔妖が吸収するところ、見たことがない」
魔妖が倒した魔妖から能力を吸収するなんて話はネットでも見たことがない。当然現実でも聞いたことがない。つまり一般的には知られていない能力だ。レアな能力なのかもしれない。
政府や大手の魔物ハンターはこの能力を知っているのだろうか? いや、流石に知らないとは思えない。意図的に公表していないのだろうか?
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