さすらい少女≪律≫と旅仲間たち

夜船 おぼろ

溺愛モーション (吸血鬼パロ 颯×律)


※カクヨムで活動されている私の尊敬している方が、吸血鬼のお話を書いてたので真似てみることにします。

※本編には関係ないお話です。単なる私の妄想ですがそれでよければお楽しみください。



***


「こんばんは」

「おう、入れよ。来てくれてありがとな」

とあるアパート。いつもは客なんていれたりしないけれど、今日だけ…というか最近は少女が出たり入ったりしている。少女の名前は律。俺と同じ大学の同級生だ。

「てかお前、夜になんで来るんだよ」

「別にいいでしょ。ご飯食べさせてよ」

「はいはい」

彼女は俺の部屋のに住んでいる。そう、俺んちの隣。なのになぜかいつもこうしてタダ飯を食べに来ている。別に嬉しいけど、不思議だ。

人んちなのにソファを大胆に使う律。まあいつもの事なので慣れたが、仲良くなりたてのときはそればびっくりしたものだ。そんな回想に浸る俺に見向きもせず、スマホをいじってごろごろしている。学校では全然そんなことないのに。

はじめは彼女と全く関わりがなかった俺だが、俺のとあるを知ってから律はここに入り浸っている。そう、実は俺は吸血鬼なのだ。

実はうちは吸血鬼の家系のようで、その血は昔から濃く継がれている。そのため俺は犬歯が鋭いし、夜目だって効く。もちろん羽で空を飛ぶことだってできるが、目撃されたら終わりなのでしたことはない。そんな俺に臆することなくこうしてずかずか近づいてくるのが彼女。ほとんど好奇心だろう。きっと。

「律、飯できた」

「ん、ありがと」

今日のメニューはビーフシチュー。四角いのをぽいっと入れるだけのやつではなく、ダッチオーブンで作るおいしさ間違いナシの本格的シチューだ。最近キャンプにハマっていて、道具を集めている。だから鍋も時々使ってあげて、さらに料理の腕を上げるという一石二鳥。まあ律が飯を食いに来てなかったらしていないが。

「やるじゃん。おいしいよ」

「お、やった」

これが彼女でなかったら、なに上から目線で喋ってんだよ!と怒鳴るが律ならなぜか許してしまう。というか、かわいいから好き。

ツンデレで女王様気質がある彼女だが、足繫く俺の元へ通ってくれてるところがかわいい。しかもちゃんとお礼言ってくれる。好き。

たまにはって言ってこないだは手料理をふるまってくれた。とてもおいしくて思わずにやけてしまったのを覚えている。

………とまあこんな感じで、俺が気持ちが悪いくらい彼女のことが好きなのだ。自分でもいつ惚れたかは分からないが、彼女を自分のものにしてしまいたいという欲があるのがはっきりと分かる。好きすぎてつら……本音だけど気持ち悪いから自主規制。

そんな思考をぐるぐる巡らせていると、彼女がごちそうさまと手を合わせて皿を流しに下げた。

「颯も食べ終わったら貸して。洗ったげる」

「え、ありがと」

ほら優しいし。思わずにやけそうになるのを必死でこらえながら食べ終わった皿を手渡す。俺の家の炊事場で当たり前のように皿洗いしている姿を見ると、なんだか心臓がばくばくしてきた。顔赤くないかな、大丈夫かな。

「颯、今日は飲む?」

「あ、うーんどうしよ」

飲む、っていうのはお酒ではなく血の話。実は吸血鬼は定期的に血を吸わないと、体調が悪くなったりしてしまうのだ。といっても三か月に一回吸血すれば問題ないが。

律と出会う前は飼っていた猫から頂戴していたが、律と出会ってからは彼女から吸血している。人間の血は栄養価が高く、元気が長持ちするからだ。

彼女は俺とそこまで特別な関係ではないが、なぜか吸わせてくれる。恋人でもないのに、どうしてだろう。いつも少し疑問に思っていた。

「そろそろ、貰っとこうかな。風呂入ったらベッドで待ってる」

「うん、分かった」

なんでベッド?と不思議そうな顔を彼女はしたが、了承してくれた。まじかこれ、俺じゃなかったら男に襲われてるぞ。



***



「颯。お待たせ」

「おっおう!」

皿洗いを済ませた律が俺の寝室へやってきた。なんかめっちゃ緊張する。てかなんで出来心でベッドとか言ったんだ俺。そう考えている内に、俺の隣に律は腰かけた。そして、すっと群青の双眸を閉じる。

「はい。いいよ」

「じゃ、じゃあ、ごめんな」

服の襟元から覗く白い首元に、俺は少々緊張しつつ歯を突き立てた。ぷつんと皮膚が嚙み切れる音がして、血の匂いが部屋に広がる。

「っ…」

ぴくりと肩を震わせる律が、少し吐息を漏らした。ちゅうちゅうと血を吸い上げると、耳元で、ふう、と律が息を吐く音が聞こえた。ちょっと今回色っぽすぎる気がするのは気のせいか…?いや、煩悩を消しておこう。ただの女友達、ただの女友達。

ある程度血を吸い上げると、俺は律の肌から唇を離した。律からの吸血はこれでまだ三回目だから、あんまり慣れないなと思ったその時。律の顔をみて俺は絶句した。

ちょっと涙目になってる…。

「今日ちょっと痛かった」

「ご、ごごめん」

「いいよ、大丈夫。ちょっとだけだから」

そう言って薄く微笑む彼女。ほんとうに優しい。そんな彼女の優しさに感激していると、先刻の傷口から血が少し垂れてきているのが見えた。今回はちょっと失敗したな。

「律、ちょっと待って」

「ひゃっ…!」

血が少し垂れている傷口を、俺はぺろりとなめ上げた。律が小さな悲鳴をあげたところで、俺は自分のさらなる失敗に気づく。やばい。

「ば、馬鹿!」

「わざとじゃない!ごめん律!!」

慌てて謝ると、顔を真っ赤にした彼女は「怒ってない」とふんと鼻を鳴らした。天邪鬼なところもかわいい。その視線に気づいたのか、今度は眉を下げて拗ねた顔になる。

「ばか」

「ほんとにごめん」

「いいよ。怒ってない」

「ほんと?」

「うん」

そう言うと律は、すくっと立ち上がった。そして、部屋の電気を消す。俺がびっくりしていると、律が暗闇の中で口を開いた。

「今日、家鍵かけてあるから。泊まっていいよね?」

「えっ」

恐らく火照った顔を隠すために電気を消したんだろうけど、夜目が効く俺にはほぼ無駄。ちょっとだけ嬉しそうに微笑む彼女の姿は丸見えだった。

「…いいよ?」



END

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