第25話「この人を支えられるのは私だけ」の危険性

 友達が面白いことを言っていた。


「大手のライバーさんのところでは、ガチ恋や金銭的な問題は意外と起きない。人が少なめでイケメン風の配信者がいる枠が一番すごくなる」


 考えてみれば大手のライバーさんはリスナーの数が多い。

 枠が開いた途端、10人くらいが入ってきたりする。

 2人きりの会話をする暇はない。


 人が少なめの枠のほうが、2人きりで話せる時間がある。

 配信者に認知してもらえる。

 密接な会話も出来るし、関係も築ける。

 

 イベントも応援する人がいっぱいいるのと違って、数人で支えないといけない。

 その中でも応援一番になりたいという気持ちが芽生えやすく、がんばれば金銭的に一 番応援してる人にもなれる。


 そして、たくさんいる枠と違って、お礼も言ってもらえるかもしれないし、頼りにしてもらえる可能性も高い。


 この時に危険な感覚は「この人を支えられるのは私だけ」という感覚だ。


 彼がイベントで入賞したいなら、私が頑張らなきゃ。

 それで仕事を頑張るならいい方向なのだけど、中には失業中でお金がないのに預金を使ってしまったり、まずい方向に行く人もいる。


 これはリスナー側だけが悪いのではなく、配信者の中には直接DMで「こんなこと君にしか頼めないけど……」と応援やギフトのお願いをする人もいる。

 この「君にしか」頼めないを、何人もの女の子に送っているのもよくある話だ。


 また、そういうことをやって、謝罪しておいて、数か月後には「心機一転、がんばりたいと思います!」再開してる人も見たことある。

 

 そういう人はたくましいのだ。

 詐欺師が一回詐欺でおいしい目を見たから、それをまた繰り返すように、今度はもっとうまくやろうと成長していく。


 転生して、前にやっていた所業をバラされても、ピンチをチャンスに変える。


「俺にガチ恋だった子が悪い噂を捏造してるけど……。俺もその頃は配信に不慣れで、思わせぶりなことを言っちゃってたのかもしれない。だから、信じてくれなくていい。わかってくれる人だけ俺のことをわかってくれればいいんだ」


 そんなことを言って(彼を信じて、そばにいてあげられるのは私だけ!)という女性をうまく作り上げて、お金を吸い取る。

 この時も「この人を支えてあげられるのは私だけ!」が芽生える。

 悪い噂に傷ついてる彼の身も心も守ってあげられるのは私だけ、そして、応援して支えるのも私……!


 女性を煽るのがうまい人の中には、一番、配信者に愛される存在になりたいという心を焚きつけて、リスナー同士でプレゼント合戦をさせるらしい。


 そうなるともう、彼を支えられるのは私だけから、彼の1番は私という形にシフトチェンジさせて稼ぐ方向になる。

 まずくなればリスナー同士の争いに疲れたとか、自分以外が悪い形にして転生も出来る。


 自分がギフトにお金を使いすぎてると思ったら、そういうところにお金を使ってないか、一度立ち止まって考えてみて欲しい。

 友達がそういうのにハマっていたら……。

 申し訳ないが、止めようがない。

 どこかで目が覚めますように、友達がお金を使い過ぎないようにと祈るだけである。

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推しに向ける感情は何なのか 井上みなと @inoueminato

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