第052話(第1章:最終話)


「知奈美にも心配かけちゃったね。いろいろとありがとう」


「全然OKだよ。それより暁斗さんだよ。もうね、ウチのクラスで暁斗さんの株、爆上がりだよ!」


「お前、またクラスの友達に話したのかよ!」


「当たり前じゃない! こんなにいい話、黙っていられるわけないでしょ? もう皆『あのSDのお兄さん、神!』って大盛り上がりなんだよ」


「SDって……」


 多分「SD貞」の意味だろうな。


「そうそう。今ウチのクラスで、SDとKDっていう新たな隠語が爆誕したんだよ」


「KD? K、K……なんだ?」


KD貞」


「くだらねー」


 女子校のクラスで話す話題じゃねーだろ。


「もう、知奈美やめてよ。退院して冷やかされるの、私なんだからね」


「大丈夫大丈夫。海奏、学校へ行くとしても来週からでしょ? 皆その頃には忘れてるよ。それに先生が『迷惑になるから、お見舞いには行かないように』って言ってたから、多分誰も病院には来ないと思うし」


 全然反省の色がない知奈美ちゃんに、俺も海奏ちゃんもため息を吐くことしかできなかった。



 ◆◆◆



 それから1時間ぐらい経っただろうか。


 海奏ちゃんのベッドの周りで話していると、篠原部長がやって来た。


 俺と知奈美ちゃんは、そろそろ失礼しようかということになった。


 海奏ちゃんに「また明日も来るからね」と伝えて、知奈美ちゃんと二人で病室を出る。


 病院のエレベーターで、ツインテールの制服美少女と一緒に1階へ降りていく。


 すると……


「はい、暁斗さん。これ、お返しします」


 そう言って俺がさっき渡した300円を返そうとしてきた。


「なんで? とっとけよ」


「いやー、実はさっき缶コーヒーを渡した時『ウチのオゴリです。この間散々カラオケでご馳走になったんで』って言いそうになりました」


「ダメだぞ! それ、言っちゃいかんヤツだからな」


「ですよね。ウチもここまで出かかったんですけど、寸前で止めました」


「そうか。それはファインプレーだ」


 あの知奈美ちゃんと二人でカラオケに行ったことは、やっぱり海奏ちゃんには内緒にしておかないとな。


「知奈美ちゃん、いろいろとありがとうな。本当に助かったよ」


「いえいえ、これぐらい全然ですよ。それに海奏を助けてくれたのは暁斗さんですから、お礼を言わないといけないのはウチの方です。あ、お礼で思い出した」


 そういうと知奈美ちゃんは、自分のカバンから何かを取り出した。


 ちょっと可愛いデザインの紙袋だ。


「これ、ウチからのちょっとしたお礼です。お疲れだと思うので、これで元気だしてくださいね」


「え? いいの? わざわざ悪いね」


 俺はその紙袋を受け取った。


 多分食べ物かなにかだろう。


 でもちょっと軽いな。


 ちょうど夕食の時間だったので、知奈美ちゃんになにか食べていくかと誘ってみた。


「ごめんなさい、今日は親と外食の約束をしているんですよ。また誘って下さい。食事だけじゃなくて……暁斗さんがよければ、その後も」


 そう言っていたずらっぽい視線で俺を見上げた。


 冗談だと分かっていても、コイツのこういう仕草にドキッとする。


 SD、ちょろ過ぎだろ。


 俺は知奈美ちゃんと分かれて、そのままアパートへ帰ることにした。


 冷蔵庫の中に何があったかな……そんなことを考えながら、電車に乗った。



 家についた俺は、なんだか面倒くさくなったのでパスタでも茹でることにした。


 ソースは何がいいかな……


「ん? そう言えば……」


 知奈美ちゃんがなにかくれたよな?


 腹の足しになるようであれば、先にいただこうか。


 そんなことを考えながら、知奈美ちゃんがくれた紙袋を開けてみる。


 紙袋の中を覗き込むと……なにやら布のようなものと、メモ紙が1枚入っていた。


 中からその布を取り出すと、白いレースの可愛らしい生地だった。


「あれ? これ、女性用のハンカチじゃないのか?」


 一瞬そう思ったが……そこで俺は知奈美ちゃんの言っていた言葉を思い出した。



「これで元気だしてくださいね」



 俺の元気が出るもの……嫌な予感がする。


 俺は恐る恐る、その小さな布の塊を広げてみた。


 すると……やや細長い逆三角形のレースの布が現れた。


「おい、これって……」


 それは……女性の下着、パンツだった。


 清楚なレース生地で、可愛くてちょっとだけエロいデザイン。


 俺は袋の中のメモ紙を取り出した。


 それには丸っこい文字で、こう書かれていた。



「暁斗さんへ これはウチからのプレゼントです。海奏のクローゼットから1枚拝借してきたよ。可愛いでしょ? 残念ながら使用済みじゃなくて洗濯済みです。夜のお供に是非どうぞ🧡」



「是非どうぞ🧡じゃねーわ!」


 俺はそのメモ紙を床に叩きつけようとしたが……それにはまだ続きが書いてあった。


「あ、ウチのパンツが見たかったら、また履いた状態で見せてあげてもいいですよ。お好みのデザインを教えて下さいね🧡 PS. このメモは読んだら絶対に捨ててね!」


「アイツ、マジで頭おかしい……」


 俺は海奏ちゃんの白いパンツを手にしながら、言葉を失っていた。


 それと同時に……俺はこのパンツを履いている海奏ちゃんを想像する。


 やべぇ、元気出ちまうじゃねーか! 主に体の一部が。


 どうやってこのパンツを海奏ちゃんに返せばいいんだろうか。


 俺は夕食前に延々と頭を悩ませることになってしまった。



つづく




 ◆◆◆


 読者の皆様へ


 本作品の第1章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 この物語は続きます。続く予定なのですが……先に1本、ファンタジーを書いてみることにしました。



【レベル1の勇者】~現実世界で生活保護を受けていた俺は、異世界で串焼きを焼く。~


 楽しみにしていただいた読者の皆様には大変申し訳ないのですが、何卒ご了承下さい。


 引き続きよろしくお願いします。



 たかなしポン太

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清楚系美少女JKに、冴えないリーマンの俺(素人童貞)が「推し活」する。 ~痴漢冤罪から始まるラブコメ~ たかなしポン太 @Takaponta

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