なんちゃらららららら




『『機会は一度のみ。しくじれば、もう、かのえの恋心は復活しない、かもしれない』』




「うえ。えっえっ。うええええい」


 空は泣いた。

 人目を気にせず思い切り大泣きした。

 もう、かのえの恋心は復活しないのだ泣くしかないでしょ。


「しょうがないでしょ。おもちゃでも拳銃の銃口を私に向けた空が悪い。しかも二挺も向けるなんて。せめてこっちが装備を身に着けてから、遊びは開始すべきでしょうが」


 かのえは空の赤くなった両頬を見ながら言った。


「うえ。はい。俺が。えっ。悪い。です」

「そうそう。空が悪い」

「うえ。そう。俺が」


(俺が早く告白していれば。二柱の恋の神様に嫉妬して、かのえへの恋心に気づいた時にさっさと告白していれば。もしかしたら。違った未来が)


「俺が全部悪いんだあああああ!!!」

「反省するのは必要だけどうるさい!!!」

「俺が!全部!悪いんだあああああ!!!」

「だからうるさいってば!!!」


 かのえは空の頬を人差し指で軽く押した。

 空は眉と口の端を下げて、かのえを見た。


「ごめん」

「うん。もういいから。すっごく反省したのわかったから。もうしたらダメだよ」

「ああ」


 ずびっ。

 空は鼻水をすすった。

 そうだ。

 今は情けない姿だからダメだけど、日にちを改めて告白。


(いやいやいや!これがいけない!告白するならいつですか?今でしょ!)


かのえ。俺。かのえが好きだ」

「………あ~~~。あ?え?あ。うん。あ~~~の。うん。あの。ちょっと。あの。タンマ」


 かのえは目を泳がせながら、両腕を交差させてバツ印を作った。

 あれ、照れてる。困ってる。照れてる。困ってる。嫌がってない。

 嫌がってない。

 空の頭の中で音楽が流れ始めた。


 あの日、あの時、あの場所で、君になんちゃらららららら~。


「あの!俺!いつまでも返事!待つから!」

「あ。うん。じゃ。あの。えっと。じゃあ、また明日」

「おう!」


 かのえは小走りですぐそばの家へと入って行った。

 空は大きく手を振ってかのえを見送ったのち、スキップをしながら家路についたのであった。











「まあもう。大丈夫でしょ」


 かのえと空の様子を二柱の神様から聞いたひびきは、まったく世話が焼けると呟いた。


「けど。まさか拳銃が二挺も必要なんて。よっぽど空が好きだったのね。かのえ


 明日が楽しみだわ。

 ひびきは微笑んで、二柱の神様にお疲れさまと言ったのであった。











(2024.1.31)



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告白したいです 藤泉都理 @fujitori

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