はえほわ




かのえから、この二挺の拳銃の弾丸へと、おまえへの恋心は移行した』

かのえは君への恋心を捨てたいと言った。しんどい、と苦しんでいた』

『わしは恋の神様の一柱』

『私は恋の神様の一柱』

『おまえがかのえの恋心をまたかのえへ戻したいのならば』

『君がかのえの恋心をまたかのえへ戻したいのならば』

『己の想いを言ってのち、かのえの恋心が籠められた、わしの一挺の拳銃の弾丸をかのえに撃つのだ』

『己の想いを言ってのち、かのえの恋心が籠められた、私の一挺の拳銃の弾丸をかのえに撃つんだ』

『『さすれば、かのえの恋心は復活する、かもしれない』』




 空がかのえの姿を見失ってから、突如として現れた二柱の神様にそう言われては、二挺の拳銃を手渡された。

 ずっしりと重いその二挺の拳銃を、落とさないように、けれど、やさしく掴んでは、二柱の神様にかのえがいると言われた場所へと、駆け走ったのであった。

 そして、今。

 小さな神社で、かのえを見つけた空は好きだと告白してのち、二挺の拳銃のトリガーを引いたのであった。

 自分への恋心が復活してくれと、切望しながら。

 しかし。


「はえ?」


 空は目を点にした。

 確かに二挺の拳銃の銃口からそれぞれ一発ずつ、計二発の弾丸が飛び出した。

 その二発の弾丸はまっすぐかのえめがけて向かっていた。

 よしこのままかのえに当たると、空は思った。

 のだが、現実は違った。

 二発の弾丸はかのえに当たらなかったのだ。

 かのえが学校の鞄で二発の弾丸を防いだのだ。


「ほわ?」

「BB弾でも、人に向けて撃ったらダメだって。ば!」


 学校の鞄で二発の弾丸を防いだかのえは勢いよく空との距離を縮めると、思いっきり空の両頬を叩いたのであった。











(2024.1.30)



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る