どうして




「え、なに?どうしたの?そのおもちゃの拳銃?」


 かのえは困惑した。

 どうして小さな神社の参道に自分は蹲っているのかもわからなかったし。

 どうして友達の空が険しい顔をして、二挺のおもちゃの拳銃の銃口を自分に向けて構えているのかもわからなかった。


「どうしたの?駄菓子屋のおみくじで当たっちゃって、嬉しくなって遊ぼうって誘いに来たわけ?でもさ。おもちゃでも銃口を人に向けちゃダメだって。はい、下ろして下ろして」


 かのえは固まっていた足に活を入れて立ち上がると、空に近寄りながら言った。

 空はそれでも、二挺のおもちゃの拳銃の銃口をかのえに向けたままだった。

 険しい顔のまま。無言で。

 様子のおかしい空に、かのえは心配になった。


「空?」

かのえ


 空はゆっくりと、やさしく、かのえの名前を呼んで。

 そして。

 好きだ。

 と。

 とてもていねいに想いを口にすると同時に、二挺の拳銃のトリガーを引いたのであった。











(2024.1.30)



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