しんどい




 もう嫌だ。

 短い石階段を上り、小さな鳥居を潜り抜けて、短い石畳の参道の上で蹲ったかのえは、嫌だと呟き続けた。


 嫌だ、嫌だ、嫌だ。

 空に恋していると気づいた時から。

 空に好きだと、あなたに恋をしていると伝えたいと思った時から。

 しんどい日々の連続だ。

 伝えよう、伝えたいと、思うのに、こっぴどく断られたらどうしよう、嫌悪感を剥き出しにされたらどうしよう、バカにされたらどうしようと、考えだしたら怖くて。

 二柱の恋の神様のおかげで、平常心で告白できたと思ったのに。

 そうだ。

 告白し終えたら終わりだと思っていたのに。

 フラれることを前提にしていたはずなのに。

 願望を捨て切れてはいなかった。

 願望がなかったら、こんなに恐怖と緊張に蝕まれることはなかったはず。


 嫌だ。

 もう嫌だ。

 捨てたい。

 もう、空への恋心を捨てて、楽になりたい。

 友達でいい。

 友達のままでよかった。

 友達のままがよかった。

 バカ話をして、バカなことをして、楽な関係でいい。


「     」











「来たな」

「そうだね」


 かのえが呟いた同時刻。

 オールバックの恋の神様とサラサラヘアーの恋の神様は目配せしてのち、重くなった拳銃を手に持って向かったのであった。











(2024.1.30)



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