卒業、そして新たな旅路へ
全てのカリキュラムが終わり、大量にあったレポートもどうにか全て提出できた。
卒業よりも一足早いぐらいであった。
しかし、厄介なことにその後の進路がまだ決まっていなかった。
卒業後はNZで働きたいと思っていたが、なかなか仕事が決まらなかった。
1年のコースだと就労ビザの問題が難しかったからだ。
就労ビザは通常、雇用者側が用意する書類もあり簡単に発行されるようなものではない。
自国民や30歳以下のみが取得可能なワーキングホリデービザに比べて、雇うだけで多くの余計な経費がかかる。
そのため、NZ全土にある多くのワイナリーで書類選考ですら通過できなかった。
ワイン造りの時期、
そんな時、ワイン学科のお母さん的存在であるマリー先生と駐車場でばったりと会った。
「あら? カリキュラムも終わって、ハッピーなんじゃない?」
と、マリーはお気楽に言っていたが、僕は「実は……」と、仕事が決まっていないことを口に出した。
すると、マリーはおかしそうに笑い出した。
「何言ってるの?
「……へ?」
マリーが説明してくれた話によると、Gisvin、地元ギズボーンにあるワイナリーから連絡があったらしい。
「日本人の奴が面接に来たけど、そいつどういう奴?」
と。
海外で就職したりすると、前職の上司か新卒なら学校に人物評価を聞いたりする。
その流れでマリーに連絡が来たらしい。
「ちゃんと真面目にやってるって答えといたわよ。それじゃあ採用するって言ってたわ」
マリーは笑いながら車に乗って帰っていった。
残された僕はぽかんとしていたが、少し遅れて笑いが込み上げてきた。
本人に連絡を忘れて、勝手に話が進んでいく。
実にNZらしいいい加減さである。
だが、気分は晴れやかだ。
そうして、ついに卒業の日となった。
たった1年の学科だったが、本当に色々とあった。
良い思い出もあれば、黒歴史もある。
まだまだ語っていない記憶もたくさんあるが、それでも無事に最後までやり遂げた。
当時すでに30歳を過ぎてはいたが、やってやれないことはなかった。
何事もやってやろうという根気があればどうにかなるものであった。
もちろん、若い内にできればもっと労力が少なく身に付くことができただろう。
しかし、歳を重ねたからこそ見えてくるものも多かったと思う。
通常の学生に比べて出遅れたとは思っていない。
これまでに人生経験を積んできたことで、これから先に築き上げていくものも、きっと一味違ってくるだろう。
だが、学校生活は自分の道を進み始めるための準備段階に過ぎない。
本当の戦いはこの先となる。
ワイン造りの世界へと本格的に入り、各国を飛び回る日々がここから始まった。
そしてこの日、新たな旅路へと一歩目を踏み出した。
PART5完
学生編 了
神の血に溺れる~Re:キャンパスライフPART5 出っぱなし @msato33
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