第9話

「それで、」

瀬良は神崎の近くまで行き、振り返る。

「あんた、何者だ?」


「これはこれは、彼氏さんですか?」

作ったような笑顔で矢代は話す。

「そうだな。で神崎、こいつ何者だ?」

「矢代蒼空。今私らと同じ21で、」

「神崎侑加様の従者です。」

「侑加?」

神崎の言葉を遮り、矢代が言う。

「従者との再会って感じじゃねぇな。」

瀬良の茶々には、誰も反応してくれない。

「それで、貴方とは”その日”まで会わないといったんだけれど?」

「”その日”?」

「はい。なので、お迎えに上がりました。」

「…もうその日なの?」

「はい。人妖大戦です。」

「人妖大戦?」

聞いたこともないだろうワードに瀬良が首をかしげる。

「そこらへんは、瀬良様には関係のないことです。」

「なっ!」

「それで、来ていただけますよね?」

「…」

神崎は沈黙している。

そこに、矢代が押しにかかる。

「貴女は人間の最高戦力と言っても過言ではない。」

「…」

「貴女にも、守りたいものができたんじゃないですか?」

「…」

「神崎、こんな宗教めいた…」

そこで、神崎が口を開いた。

「分かった…付いていく…」

「なんで…」

矢代は憎たらしい笑みを浮かべながら言う。

「それでは、行きましょうか。」


「広島へ」


「神崎…」

「ごめん瀬良。…ありがとう。」

離れていく神崎。取り残される瀬良。

「…なんだよそれ、そんな」

「困ってるなら、私が相談に乗ろうか?」

絶望している瀬良を切り裂くような声が聞こえた。

そこに立っていたのは…ただのおっさんに見える。

「相談って…」

「大丈夫。一緒に来なさい。」

そういって笑う。

その笑顔は、矢代とは対照的な、良い笑顔だった。

「はい。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もし、肝試しに連れて行った彼女が鬼の末裔だったら @kotorihiiragi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ