第4話



 キス。



 人生で初めての体験だった。


 コツンと、歯と歯がぶつかってしまった。


 テレビとかでしか見たことがなかった。


 見よう見真似だったんだ。


 きっと、——彼女も。


 唇に触れた時、硬直する体がお互いにあった。


 心臓がバクバクだった。


 次にどうしていいかも分からず、終始ドギマギしていた。


 柔らかい感触が、頭の奥に突き刺さった。



 何もかもが初めてだった。


 撫でるようなシャンプーの香りも、目眩がするほどの甘い感触も。


 彼女の手が、首の後ろに伸びてくる。


 「来て」


 そう言われた気がした。


 だから彼女の腰に手を伸ばした。


 固く結ばれた帯の縫い目が、指の先に絡んで。



 白い肌に、透き通った髪。


 首の根本に顔をうずめる。


 息を吹きかけると、微かな声が聞こえた。


 もう十分すぎるほどに大人びたその体は、俺には刺激が強すぎた。


 だからできるだけ直視しないようにした。


 必死に自分に言い聞かせた。


 “ガッカリさせちゃダメだ“って、ただ、——なんとなく。



 不思議なもんだなと思った。


 俺だって男だ。


 エロ本だって見るし、友達同士下ネタで盛り上がったりもする。


 だがいざこうして本番を迎えると、意外と理性が働くもんだと思った。


 彼女の裸を想像してなかった?って言われたら、そりゃ嘘になる。


 想像したりもした。


 いつか、こういう時が来るのかもって。




 パサッ




 帯をほどくと、彼女の身体が露わになった。


 胸の上にあるホクロと、水色の下着。


 彼女は恥ずかしそうに腕で顔を隠してた。


 俺はブラジャーのホックに指をかけた。


 次のプランなんて、考えてなかった。


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