第5話


 

 「おい」



 ホックを外して、ブラジャーを剥がそうとしていた。


 ヘソの近くに顔を近づけ、おもむろに舌を出し…



 ガッ



 突然彼女の腕が、俺の首元を掴む。


 喉仏が勢いのあまり奥に引っ込む。


 首の骨が曲がる音がした。


 グラッと、脳が揺れ——



 「ファッ!?」



 思わず声が出てしまった。


 唐突すぎて訳が分からなかった。


 視線の先には、頬を赤らめれている彼女の「顔」が。


 …なんか、怒ってる?


 ものすごく深く、眉間に皺が寄っている。


 ホックが外れてこぼれそうになっている胸を右手で隠しながら、左手は、まっすぐ突き放すように俺の顔を持ち上げていた。


 皮膚に爪が食い込み。



 「貴様、今何をしようとしているかわかっているか?」

 


 …な、な、何を…?


 そりゃ、決まってるだろ?


 俺たちは…今…



 「…さ、さくら…?」

 


 頭の中が真っ白になる。


 だって、今すごくいい感じだったじゃないか…?


 …え、違う…??


 なんでそんな怒ってんだ?


 服を脱がしたのがまずかった?


 …それとも、触っちゃいけないとこでも触った!?

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