1日目 ②
「お疲れさまでした~」
現場から人が退室していく。気が付けば舞台班が撤収作業を手際よくこなしていた。遠山もお疲れと言いながら会議室へまひるを連れていった。
「じゃ、反省会しようか」
「うぇぇ~~」
「まったく……」
デスゲーム企画運営部では、新人研修と称して新人にデスゲームを企画させ実際にやらせる、という実務がある。もちろん、社内の人間を対象にするため実際に殺すわけではないが。主にD組の人員が使われるが、一人は主任が実際のゲームプレイヤー目線としてジャッジするのが習わしである。先日主任になった遠山にとって初めての経験であった。
「コンセプトは良かったよ。往年のデスゲームって感じだったね。ただやっぱりババ抜き5回は流石にダレるよ」
「はい……」
「カードゲームでやるにしても別のゲーム用意しないとね。それにババ抜きならD組の娘が言ってたように色々器具用意しないと。バラエティ番組とか参考にしてもいいんじゃないかな」
「はい……」
「あと逆上して殺しちゃダメ。予定が狂うでしょ」
「はいぃ……」
はぁ、と小さくため息を漏らし、書類に目を落とす。ゲームの指摘をしてくれた娘は本来電撃を浴びる予定はなかった。最初に見せしめで死ぬ(仮死状態だが)役の娘、ゲームで負けて死ぬ予定だったヤンキー風の男、この2名だけだった。D組の管理をする管理課から睨まれたことを思い出す。改めて謝罪をしなければならないな……
「とりあえず今回の研修は終わり。何が悪かったか自分なりにまとめて、再度企画書を出してください。じゃあいつもの業務に戻るよ」
「は~い……あれ、いつものってなんかありましたっけ?最近暇だから研修しようって話じゃ?」
「さっき部長から依頼が来たって連絡が来たんだ。とりあえず詳細を見てみてからだね」
弊社は殺し屋の稼業の一つとしてデスゲームをしているので、あくまで依頼が無いと動けないのが実情だ。暇な時はずっと暇だったりする。
依頼書はメールで送られてきていた。ただし差出人は不明。
「……なるほど、ターゲットはT大学の演劇サークルだ」
「私にも見せてください!……えっ依頼料めっちゃ高!」
依頼書には、事細かに演劇サークル員についての情報や行ってほしいデスゲームの詳細について書いてあり、ひと際目を引いたのは相場の3倍はするであろう依頼料だった。とにかく今は暇なので、給料に歩合が一部採用されている我々社員はとにかく依頼をこなさなければならない。
「先輩……!」
「夏のボーナスが舞い込んできたね」
二人、厭な笑みを浮かべ各々のデスクに戻りPCを起動した。仕事が始まる。
デスゲーム運営会社における慌ただしい3日間について イカダ詫び寂 @ikada_wasabi
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