エピローグ
ep話 物語のはじまりは
グレイシウス皇国は女神ノラシエスを信仰している。
彼女の祝福により導かれし聖女が国を繁栄させると信じられており、年始に皇帝と大司祭長が行う召喚の儀が行われる。
けれどもその前の年の終わり際、召喚の儀が
本人の意志によるもののはずがないという彼の騎士の強い訴えを元に誘拐を視野に入れ、騎士団によるいく度もの捜索。
けれども甲斐なく、ヴァイス殿下の消息を辿ることはできなかった。
ファルべ皇帝は次期皇太子として代わりに弟のブランを任命。
その選出そのものがヴァイス皇太子の死を肯定するものだとしてネグロ騎士団長が反発し、関係性が悪化。
本編へと繋がることになる────。
◇
◇ ◇
「ねえねえ、前に遊んでたゲームがリメイクされたんだ!一緒にソフトダウンロードして遊ばない?」
「前に言ってたやつ?聖女さまとして召喚されて、国を救うっていう……」
賑やかな街並み、夕暮れ時。
授業を終えたのだろう、学生服を着た少女たちが笑いながら歩いていく。
「そうそう。『戦華の聖女〜忘れ名草と誓いの法術〜』ってタイトルなんだけど、登場するキャラクターたちの人間模様が楽しいんだ」
人間模様?と首を傾げるもう一人の少女に、熱弁を重ねていく姿は見るものが見ればかしましく、また別のものが見ればほほえましくも感じるだろう。
至って普通の、学生たちの日常。
「リメイクってことは、追加要素とかあったり?」
「みたい!スチルの書き直しとか一部イベントが変わってる他に、新しく追加した隠しキャラの攻略が出来るとかで。」
一緒に協力して攻略しよう!と手を合わせる少女に、もう一人が「いいけれど……遊び方の説明くらいはしてよね」と頷く。
「乙女ゲームなんでしょ?攻略対象はいるの?おすすめとかは?」
「そうそう。前の時は攻略できるキャラは友情と合わせて8ルートで、一番人気はネグロ騎士団長かなぁ。クールだけれど亡き主人に一途で……!」
そう話をしているうちに、家の前で立ち止まる。手招きをした少女の後ろ姿を見て、肩をすくめながらも笑う少女が続く。
玄関へと上がりこみ、家の人と挨拶を交わしてから部屋へと向かった。
取り出したゲーム機器の電源を入れて、ダウンロードのページへと飛べば、そこには新しいゲーム情報がならんでいる。
そのうちの一つ、青い鳥が聖女の腕へと舞い降りるアイコンを選んだ。
「一番人気がその人なのは分かったけど、あなたが一番好きなのは誰なの?」
「私の最推し?攻略できないんだよねぇ……残念ながら」
「え?そうなの?」
はじめて遊ぶ少女がゲーム機を持つ友人の顔を見れば、困ったような笑顔を浮かべている。
「うん、ゲーム本編の前に死んじゃってるから……。あーあ。攻略したいなんて無茶なことは言わないけどさ」
「せめて、ヴァイス様が生きて幸せになれるルートもあればいいのに!!」
リメイクで増えてるかもよ?むりむり!と会話を交わす少女たち。
その手元で、ダウンロード完了のお知らせがピコンとなり響いた。
死に戻った皇太子殿下に青い鳥がもたらすのは、幸せではなくゲームの裏情報です 仏座ななくさ @Nanakusa_Hotoke
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