怒涛の展開へ!

<主人登場>

 空き巣を縛ったものの、どうしたらいいか悩んでいるところに社長が帰宅。実はハワイにはまだ行っていなかった。

 主人に絶対帰って来てほしくないところで本人が帰ってくる。侵入系の王道ですね、今回もやはり帰って来ました。韓国映画の「パラサイト」にも似たシーンがありましたね。あの映画では家政婦として忍び込んだ家族が主人たちがいない間にきれいなリビングをスナック菓子でめちゃめちゃ汚く使い放題してしまっていましたね。あのような演出があると「これで帰って来たら大変だ!」と思わせることに一役買っています。

 帰って来たのだから、逃げてしまえばよいのですが、そこを敢えて家の中に隠れるがいいですね、こういった問題を解決しないまま宙ぶらりんにする、私はサスペンジョンと呼んでいますが、これが見ている人を引き付けつづけるんですね。

 たださすがにばれるよな、と思ってしまいました。3人+1人も侵入しているわけですから。

 ここは私の提案のハウスキーパーがいて「あの人は帰ったら必ずワイン飲んで寝るから、ここで隠れていれば絶対大丈夫!」みたいな情報があれば、よりよかったかなと思いました。

 また、最初の開かずの部屋があればそう簡単には入らないでしょうから、そこに隠れても良かったかもしれません。


<翌日、白状>

 翌朝、監禁していた空き巣が見つかり、田中が出て来て、白状。社長は寛容な心で許す。


 ここはストーリーとして危険な場所です。


 どういう意味で危険かというと、このお話の大きなテーマは「侵入」です。このやってはいけない行為を被害者である社長が許してしまったら、話が終わってしまうからです。この時間をあまり長くとってしまうとチャンネルを変えられてしまいます。

 しかしそこはお見事、次の展開が待っていました。

 田中、小川、空き巣は外に出たのですが、あれ? もう一人は?


<復讐>

 ここまでの展開の中、さりげなく最後のもう一人の江川が田中に過去を語るシーンがあります。旦那を誰かに寝取られたと。でもそれが誰だかわからないし、知りたくもない。

 しかし偶然にもそれがこの社長だということにこの時気づいてしまう。殺意を覚えた江藤は社長を殺しに行く。これも開かずの間に飾ってあった写真だったらよりよかったのではないでしょうか。

 旦那を寝盗られた、というのははるか昔からずっと継続してある愛の増悪であり、いつでも利用可能です。ここにこの展開を持って来たのは見事でした。

 しかもそこで殺されかけた時に、そこにいてはいけないもう一人の「侵入者」が助けに来るのです。


<コンシェルジュ登場>

 社長が殺されそうになるところに、何故かコンシェルジュが助けに来る。え? ここ家の中だよ? そうです、コンシェルジュも「侵入者」として家に隠れていたのです。ストーカーとして家に侵入していたわけです。ここまできて、この話はこういう展開なのか(ひたすら色々な人が色々な理由で「侵入」する、というお話)、と視聴者と同じ方向を見ることができます。

 こんなにされても社長は全ての人を許します。

 これが意味がなくただの寛容な社長だった……で終わっていたら逆にこのお話は2流に成り下がっていたことでしょう。

 ここまでされて許すはずがないのです。

 勘のいい人は想像がつきますよね?


<空き巣だけは気づいていた事実>

 ここで話は終わらない。空き巣が何かをぽろりと落とす。実は空き巣は気づいていたのです。社長はやはり脱税をしていた。そしてお金を小さな置物に隠していたこと。それをしれっと盗む。ここがまた面白いですね! 


<社長はやっぱり脱税していた>

 実は元から国税局にマークされていて、いわゆるガサ入れが入り、社長は逮捕、愛人も逮捕で物語は大団円となります。まさに待ってました、というお見事な展開。ここで、最初からストンと腑に落ちた形になります。

 ただ、こういう展開であれば、最初の「脱税疑い」が単なる(聞き間違いに近い)勘違いだった、というのは少しもったいなくて、やはりハウスキーパーが核心に近い証拠を持っていて、むしろ3人の勘違いで脱税ではなかったと誤って判断してしまった、というほうが生きてくるかなと思いました。


<おわりに>

 一貫して侵入者が良いことをする、でも侵入しているから言えない。このジレンマをやり続けるお話でした。とても面白かったです。

 途中からは空き巣という別の侵入者、さらにはコンシェルジュも混じって怒涛の展開で釘付けでしたね。

 怒涛の展開といえば、ラピュタですね。


「あなたの知っているラピュタはせいぜい2割」

https://kakuyomu.jp/works/16817139558136856413


 あの名作は最初から最後までジェットコースター並みに、絶えず何かが起こり続けます。視聴者を引き付けて止まないスピード感を出すにはこの手法がいいのかもしれません。


 ここまでお読みいただきありがとうございました。

 今後も気が向いた時に「せいぜい2割」シリーズとしてアップしていきますので、よろしくお願いします。リクエストも受け付け中です♪

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あなたの知ってる「侵入者たちの晩餐」はせいぜい2割 木沢 真流 @k1sh

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