タイトルと導入が抜群に強いヒキ!

 まずタイトルがいいですね、「侵入者たちの晩餐」。侵入者という不穏な響きに晩餐という優雅な言葉。こういうタイプの違う二つの言葉をくっつけると、インパクトのあるタイトルになります。


 勤めている会社の社長が脱税をしているという情報を聞き、それを奪っちゃおう、という始まりです。脱税した悪いお金なんだから獲っちゃっても構わない。え、本当にいいの? と思わせることで、視聴者の興味を惹くことができます。

 CMを見るたびに「これは面白そう!」という強いインパクトがありました。


<動機が薄め>

 ただ惜しかったのがこの最も大事な部分である「侵入」の動機です。これだけの犯罪を犯すなら、主人公たちを揺り動かす強い動機が欲しかったです。人間が動く強い動機というのは、盗みであれば多大なる借金、親族が病気になり大金が必要、愛する人(孫や子ども)の夢を叶えるために大金が必要だが、それを諦めるという話を聞いた、大事なものをや人質を取られている、といった動機があって初めて成り立ちます。

 今回は「どうせ悪いお金なんだから奪っちゃおうよ」という誘いでした。田中さんは「そんなのいいの? (寄付するんだから)いいことだから仕方ないか」とほぼ自分を納得させる形でやることになりました。

 それだけでここまでやるかな……という点がちょっと気になりました。


<侵入が簡単すぎる?>

 合鍵を作って、社長がハワイ旅行に行っている(と思っている)日に侵入します。このシーンも結構あっけなく家に入りました。

 通常であれば、時間もあるので数日下見をしてもいいかなと思います。そしてコンシェルジュ(後々重要な人物となる)に、3人が道路にいただけで「住人以外はうろうろしないでください!」と言われるくらい固いガードのマンションなので、普通に入れてしまうことも疑問に思いました。この点は後々の伏線となるわけですが、それが分かるまではちょっと「?」と思っってしまいました。

 入り口で「あ、ちょうどコンシェルジュもいない、ラッキー」という流れで侵入しましたが、「こんな高いマンションでそんなことある?」という疑問も思いました。


<提案>

 そこでどうすればよいか。

 自分であれば、3人の1人を社長の家のハウスキーパーにしてしまいます。家の掃除をする人であれば家の出入りも自由。そして、家には一つだけ誰にも入れない開かずの部屋がある。電話の声がちょうど聞こえてしまって、どうやら脱税していることを疑わせる会話も盗み聞きし、どうやら開かずの部屋に隠しているらしい、という設定にします。そうすれば侵入はたやすいです。毎日にように出入りしているわけですから。

 さらにこのコンシェルジュが真面目そうなんだけど、何故か突然タバコでも吸ってるのか、いなくなる時間帯がある。というシーンも入れます。それを見計らって、ハウスキーパーの1人が2人を呼び寄せ、侵入するようにします、どうでしょうか?

 となると、自分がこのシーンを作るなら、ハウスキーパーの小川が脱税のお金を奪いたいとずっと思っていたが、一人ではどうもうまく行かなそうなので諦めていた。そこで田中がすごく大金が必要という情報を聞く。であれば誘えば一緒にやるんじゃないか、ということで誘う、とう流れができます。こちらのほうがスムーズかもしれません。


<人ん家なのに!? がおもしろい>

 サスペンスドラマに詳しい江藤も加えて3人で侵入してはみたものの、お金は見つからず、しかも脱税というのは勘違いだったことがそこでわかる。しかも面白いのが、人の家に侵入しているところで、脱税の情報源の友達に電話をかけ、そこで実は勘違いだったことが判明する。情けないですが、この展開が面白いですね、もう侵入しちゃってるし。そこで、「帰ろう」と言って3人は外に出るのですが、田中さんが、「申し訳ないから、掃除しておこうよ」と言って、再び侵入する。


<再侵入がちょっと不自然……どうするか?>

 一回出たのにまた入る。その理由が掃除をしてお詫びの意味も込めて、少しでもプラスに持っていこうという展開。さらなる犯罪を犯すにはやはり動機が薄い気がします。おそらくここは非常に悩んだシーンだと思います。というのも、後々分かりますが、ここで一回出てくれないと次の展開(別の侵入者が入る)につながらないからです。であればこんなのはどうでしょう?


<再侵入の動機>

 侵入したものの、脱税はないことがわかった。とすれば、侵入した形跡を消して、自分が犯罪者にならないようにするはず。なのに、出てから気づいたのは、机の上に明らかに自分とわかる何か携帯品を置き忘れた。これであれば足がつくので、再度戻るという危険を犯してももう一度入る理由にはなると思います。

 そこで、「良かった、あった!」というところで、物音に気づく、でもいいかなと思いました。


<侵入者は自分たちだけではなかった?>

 再度家に侵入し、お詫びに家の掃除をしていると、家に自分たち3人の他に誰かいる! 実は、空き巣が偶然にも紛れ込んでいたのです。

 ここが物語が大きく動き出すところで、非常に面白かったですね! 一旦話が落ち着こうかと思ったら、実は別の侵入者がいた。

 この侵入者は本物の空き巣で、借金に困っていた宅配アルバイトの男が、金銭目的で侵入していたわけです。

 さらに我々の大好きなジレンマが訪れます。

 空き巣をなんとか捕まえるんだけど、警察に突き出すと自分が侵入していることがバレるから通報もできない。結局この話はこのテーマに尽きるのですが、そこをひたすら突き続けるところが面白かったです。

 そしてさらなる怒涛の展開が続きます。あの展開の王道である「してはいけないこと、起きてほしくないことを起こせ!」が来ます。

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