第3話 総司令官

 陽臣たちは海先生と共に『マナ』量の計測のため第一試験会場に到着した。会場には陽臣含め12名の研修生と4人の教官が集っていた。

 会場は一階、二階となっており一階には機械が間隔をあけて2列に2台づつ並んでいる二階はまるで何かを観覧するために作られたと思われるほどの一面ガラス張りになっており一部だけガラスがなくなっておりベランダのようなものが一つ飛び出ていた。

 すると、そのベランダに男が二人現れた。

 一人はやる気のなさそうなガッチリとした男性ともう一人はひょろ長く眼鏡をかけたいかにも頭のいい学校を卒業したのだろうと思わせる風格の秘書が立っていた。

 やる気のなさそうな男性が喋る。

「あー、えーとだな…おらぁー沖田東二おきたとうじ。まーこー見えて総司令官だよろしくー」

 あまりのやる気のない自己紹介と総司令官という言葉のギャップに研修生は戸惑う。

「ちょっと!東二さん!しゃっきっとしてください!あなたは総司令官ですよ、ここでびしっとした姿を見せておかないと組織に示しがつきません!」

 東二のあまりにものやる気のなさに秘書も突っ込まざる負えなかった。

「だから、俺は嫌だったんっだよ、お前がやれよ!」

「だめです。」

 東二はため息をつきまた話し出した。

「はぁー、めんどくせーが、お前らには二週間の強化合宿をしてもらう。近頃ガイストの動きが活発になってんだわ。だからお前らには強化合宿が終わり次第すぐ現場についてもらうからよろしくー。」

 このことはつい先ほど決まったようで教官たちも少し驚いていた。

「まー詳しい話はお前らの教官に今から説明するから教えてもらえ、てことで先生ども俺のとこまで来てくれ。俺からは終わりだ。」

 皆の反応は「…」無理もない。

 東二の話が終わると研修生の一人の男が東二に向かって言葉を発した。

「おいおい、こんなやつが総司令官かよ。こんなやつがなれるなら俺がその座に座るのも時間の問題だな。’まぬけ’。」

 男があざ笑うように東二に向かって煽りの言葉をかける。

 すると、その時だった。


ドン!


 陽臣たちの上に立っていられないほどの重さの重りがのしかかってきた。陽臣は上を向くと重りなど何もなかった。陽臣たちを押さえつけていたものとは東二のだった。


「おい。クソガキ。言葉を慎め」


 東二は一言だけ発し煽ってきた相手を見向きもせず、姿を消した。

 研修生にのしかかっていた重りは東二が消えると同時に消えてしまった。

 先ほどの研修生はというと、なぜか


ゴホンッ

 

 秘書が咳払いをし研修生の注目を集めた。


「あーみえて、祓魔の総司令官を務めるお方です。言葉にはお気をつけてください。では、私が引き続き強化合宿の説明を致します。先ほど総司令官がおしゃっていた通り皆さんには強化合宿を行ってもらいます。ですので予定していた『マナ』測定はなくなり代わりにこの強化合宿になります。皆さんにはこの合宿で《ガイスト》と戦える知識、技術を身に着けてもらいます。少し話はそれますが、私たち祓魔師は五つの階級が存在します。下からD級、C級、B級、A級そして、単独でのA級ガイスト討伐も可能にしS級ガイストにも張り合える実力を持ち人外認定された者のみが獲得でいる『最強の称号』S級があります。話を戻しますが皆さんには合宿最終日試験を受けてもらい皆さんの階級を計らせてもらいます。もちろん階級が高ければ上位のガイストとも戦うことになりますがその分報酬も高くなります。ですので、できるだけ高い階級を獲得できるよう頑張ってください。以上で強化合宿の説明を終わります。教官方は今から私のもとに集まってください。」

 

 秘書はそう言い話を終えた。

 研修生の緊張も解けてそれぞれ雑談をしていた。


「私ああいうイキった目立ちたがり屋嫌いだわ」

 鬼塚りこがそう言って先ほどの煽り男を見る。

「そもそもあの総司令官を弱いとみた時点であいつの強さが知れるわね」


 鬼塚の言っていることはもちろんだが、僕には単純に弱いとみて煽ったとは思えなかった。そもそも『総司令官』という肩書きがある以上実力者なのは確かだ。それはバカでもわかる。しかしそれでもあの男は煽った。それに最後の笑み、なにか目的があってやったのではないか。例えば、とか。それにあの男は『その座に座るのは時間の問題』と言っていた。その言葉は前からこの組織をよく知っておかないと出ない言葉だ。いや、これ以上考えても仕方がない、あの男に直接聞く方が早そうだ。


 陽臣が考えている中、月下聡が先ほどの鬼塚の発言に疑問を抱き質問した。


「鬼塚さん、総司令官の強さが分かるの?」

「ええ、わかるわ。私、幼いころから相手の強さがオーラのようなもので見えるの。まーここにきてそのオーラが『マナ』だったってことを知ったんだけど。それで、あの男の『マナ』はすさまじく大きく質が濃くそして波がなかった」

「質が濃い?波がない?どういうことなの?」

「私が経験した中で、強い人のマナってのは三つの中のどれかに当てはまってた。1つ目は『大きい』、二つ目は、『濃い』濃いってのはマナは通常後ろの背景が見えるほどの濃さなの、わかりやすく言えば水蒸気のような感じ。それが濃い人のマナになると後ろの背景が見えなくなる、例えるなら濃い煙をまとってる感じ。そして三つめが『波がない』これも通常マナの淵が波のように揺らいでいるの。でも強い人はこのうちの波がなくなって強い人ほど綺麗な線になっているの。たぶんこれがマナコントロールに直結してくるのだと思う」

「じゃー、総司令官はその3つの特徴を持ち合わせていたってこと?」

「そう。しかもその三つとも今まで私が見てきた比じゃなかった。あれは控えめにいってね」

 陽臣、鬼塚、月下が総司令官の強さを再認識し息を呑む中、海先生が三人のもとへ戻ってきた。


「すまない!遅くなってしまった!」

 この人が喋るとは雰囲気を明るくして気がする。

「では、合宿先に行こうか!説明は道中行おう!」

 そうして、4人は第一試験場を後にした。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

祓魔のリベンジ ラッコ先生 @pipi_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ