第2話 東京支部
陽臣は21時ちょうどに門の前に着いた。そこにはスーツを着て、夜なのにサングラスをつけているいかにも秘密組織って感じの男性が立っていた。
その男性の背後には大きな黒のセダンが停車していた。
歓迎の熱いことだ。
「阿部陽臣様でございますか?」
「はい」
「お待ちしておりました。さ、どうぞ」
男性はそう言い後部座席のドアを開けてくれた。
まるで、社長にでもなった気分だ。
そして車へ乗り込んだ。
車に乗り込んだ時、「詳しい説明は東京支部についてから言います」とだけ伝えられた。道中終始沈黙が続いた。
東京支部というくらいだ、それも国の秘密組織。さぞかし良い建物を持っているのだろう。
そう思い陽臣は少し浮かれた気持ちで過ごしていると、車はどんどん山道を登っていくではないか。しかも都心とは真逆の方に。
陽臣は不思議に思い、何時間もの沈黙を破り質問した。
何か失礼なことを言ったら悪いなと思い恐る恐る聞いた。
「あのー…これ都心とは真逆に進んでないですか?」
「合っていますよ。お気持ちはお察ししますが私たちの仕事は命を狙われるわけでもありますからあえて都心から離れ山々に囲まれた土地を選んでいるのです。しかし、設備は充実しておりますのでご安心ください」
そうすると窓から東京支部と思われる建物が見えてきた。その建物は長方形でとても大きかった。そして、コンクリートのような材質をしていた。しかし建物の大きさに反比例して窓の数はごくわずかだった。見た目は質素で大きな建物という印象を受けた。
そんな風に観察しているといつの間にか車は目的地に到着していた。
「到着いたしました。」
そう言って男はまたも僕が乗っている後部座席のドアを開けてくれた。
「ありがとうございます」
僕がそういうと男は「お礼などいりません。仕事ですから」と言い残しセダンに乗りどこかへ去って行った。
なんてスマートな人だ。名前でも聞いておけばよかったな。
そんなことを思いながら陽臣は建物に入って行った。
扉を開けるとそこは中庭のような構造をしていた。中庭には芝生が敷かれその中心には噴水が設置されている。中庭を大きく囲うように通路が1階、2階とあった。
すると噴水の方から誰かが陽臣のほうに向かってきた。
「やあ!陽臣くんだね!」
向かってきたのは、黒髪短髪で爽やかな顔の男性だった。
「はい、そうです」
「ようこそ東京支部へ!俺は君の研修指導をする、教官の
なんて元気な人なんだ。そしてその笑い方の癖。
「ついてきなさい!君の同期になる二人の研修生のもとに案内しよう!」
海先生はそう言い僕を個室に連れて行った。
「二人とも!もう一人の研修生を連れてきたぞ!こちら阿部陽臣くんだ仲よくするんだぞ!」
僕は海先生の紹介の後に軽くお辞儀をした。
「よろしくお願いします」
陽臣の前にいる二人は、陽臣と同じく今日来たばかりの研修生だ。男の方は少し気が弱そうで根暗という印象が与えられる。歳上のお姉さんに可愛がられそうだ。一方女の方はショートカットで吊り目で気が強そうだ。でもよく見ると美人な顔立ちだ。
「私、鬼塚りこ。よろしく」
芯の通った声だ。
「ぼ、僕、月下聡。よ、よろしくお願いします」
こっちは芯の通っていない、ふにゃふにゃの声だった。いや、喋り方と言った方が正しいかもしれない。
「よし!自己紹介も終わったことだし今から君たちの『マナ』の性質を計測しに行く!しかしだ、その前に『マナ』について軽くだが知ってもらう!」
そう言って陽臣たちは訓練室に移動した。
「『マナ』の使いかたは二つある!一つ目は身体強化だ!人間の体の中、外には『マナ』が散らばっている。そしてその外、中両方を循環させてやるんだ!まあ、詳しいやり方は授業でまた教えるとする!そして身体を強化させることで!」
ドーンッ!
海先生は目の前にあった大きな頑丈な岩を一発の拳で粉々にした。
もちろん陽臣たちは驚きを隠せずにいた。
「そして二つ目は《ガイスト》からの力の付与だ!《ガイスト》たちは心臓の代わりに『マナ』の核がある!その核を専用の武器に埋め込むんだ!」
そう言って海先生は腰についてある銃を取り出した。
「こいつには、『
海先生は陽臣に向けて銃口をまっすぐ向けて発砲した。
パンッ
銃口は陽臣に真っすぐに向いていたはずなのに弾は陽臣の後ろの壁に着弾していた。
「今のは気流を変え弾を曲げたんだ!これが俺の『海入道』の力の一つだ!」
曲げれるとはいえ僕の頭めがけ迷いもなく引き金を引けるなんて、狂ってる。もし当たったらどうするんだ。
「『マナ』コントロールの制度を上げれば上げるほどこいつの力をさらに引き出せるぞ!」
そう言って海先生は銃をしまった。
「じゃー、
そう言うのは陽臣の隣にいる鬼塚りこだ。
「ダハハハ!面白いな君!確かに理屈ではそうなるな!結論から言おう、それは無理だ!人が持つ『マナ』の量が多ければ使用できる《ガイスト》の階級も高くなるのだが、大抵の人間はC級、良くてB級だ!稀にA級を使える化け物がいるが!そしてだ!そもそもの話として核を使用するには核を取りにいかないといけない!要するに《ガイスト》の核を壊さずして核を奪わないといけない!そして先ほど鬼塚くんが言っていた最強!《S級ガイスト》たちはうちのA級祓魔師が大人数でやっと勝てるか勝てないかの存在だ!しかもS級にも強い弱いが存在する!だから鬼塚くん君の考えは無理だ!残念だったな!ダハハハハ!」
「くー!なんかむかつく教官ね!こいつぅぅぅ」
鬼塚の頭からは湯気が出ているそんな気がした。
陽臣は先ほどの話で疑問に思うことがあったので聞いてみることにした。
「先生」
「なんだね!陽臣くん!」
先生の声の音量にあてられなぜか陽臣の声も大きくなってしまった。
「もし自分の『マナ』以上の核を使うとどうなるんですか!」
「いい質問だ!」
鬼塚が冷たい視線で陽臣を見た。
「なんであんたまで大きくなってんのよ。」
それは僕が聞きたい…
「なんで自分の『マナ』に合うものを使わないといけないのか!それは!《ガイスト》の呪いにあてられてしまうからだ!」
「呪い?」
「そうだ!自分のマナに合わないものほど呪いは大きくなる!最悪体を乗っ取られ死ぬ!君たち!ここに来るまでに特徴的な髪色や目、体の者を見なかったか?それも呪いの一種だ!」
海先生の話を聞き陽臣が呟いた。
「なるほど、
すると、海先生が陽臣のつぶやきに反応した。
「お!陽臣くん!白夜くんと狛犬くんに出会ったのか!それは運がよかったな!」
「え、それはどういう、」
海先生はそんな僕を無視し、いや気づかずに話を戻した。
「話は戻すが!要するに呪いの影響があるから自分に合った核しか使えないってことだ!ちなみに、さっきの鬼塚くんの話じゃないが祓魔師で一番『マナ』量が多いいやつでもA級の核を使用し呪いを受けている!だから鬼塚くんの推理は間違いだ!残念だったな!ダハハハ!」
鬼塚は海先生に二度も煽られ海先生に殴りかかろうとしたので陽臣と聡は必死で止めに入った。
「こいつぶっころすー!!!ウキィーーー!」
「落ち着けー!この人先生だからー!」
「鬼塚さんお、落ち着いて下さい、ひぃぃ、こわいぃ」
そんな僕たちをみて先生は大笑いしていた。
「ダハハハ!元気が一番だ!ダハハハ!」
先生の笑いが鬼塚の火に油を注ぐ。
「ウギャーー!!!」
鬼塚が落ち着きを取り戻し、先生が話し出した。
「おっと、すまない!話過ぎた!それでは今から『マナ』を計測しに行こう!」
そして僕たちは先生の後をついていった。
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