最終話 卒業アルバム
けれど、彼女は僕との手紙のやり取りはやめなかった。僕は手紙の交換を止めようとメールで伝えた。
『せっかく仲直りしてはなせるようになったのに。手紙がダメでもメールはいいでしょ。メールちゃんと返信してよ』
メールは義務的に返した。彼氏がいるのに他の異性と仲良くするのはどうなんだろうか。僕の考えすぎなんだろうか。素っ気なく返信していると、徐々にメールが来る頻度が減り、彼女が付き合い出してから二ヶ月、ついに連絡は来なくなった。
それから卒業式まで話すことも連絡することすらなくなった。
卒業式、皆すすり泣いていた。小学校から一緒だった皆。背丈も不揃いに伸び、声もあの頃とは違う。髪型をワックスでセットするようになった子もいたり、三年間で皆すごく変わっていた。僕は変わっただろうか。中学一年の頃から変わらない。彼女を好きなことも、素直に話すことができない所も。
悪い方に変わったことはあった。人と話すのが好きだったのが嫌いになり、不用意な発言をしないためにも口数が少なくなった。人の顔色も人一倍伺うようになった。僕には何もない。いつまでも中学一年生の頃を思い出し、彼女を想う、僕の時は止まっていた。
卒業式も終わり、教室で最後のHRがあった。
僕は、早く帰りたかったが担任が最後に自由時間をくれた。
「ここに書いて」
彼女が僕の席のところに来て卒業アルバムを突き出した。
「君のも書いてあげる」
彼女は僕の卒業アルバムを手にした。
空白だったページに彼女が文字を書き込む。
僕も、黒字だらけのページから隙間を見つけ、文字を書いた。
すごく時間が過ぎるのが早かったね
きょうまでに仲直りができて良かった
だから、もっと本心で話せたら
よかったと思う。 高校でもがんばってね
今思えば、笑っちゃうほどすごく変な文章だ。この時の僕には、この文章力が限界だった。
彼女は気づいたんだろうか。
臆病な僕の精一杯の告白だった。
流されやすい僕は取り返しのつかない恋をした。 天ノ悠 @amanoharu
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