第29話 マッチポイント、再び
6-5
デュースサイドから隼人さんのファーストサーブ。
ここのポイントを落とせば追いつかれてしまうが、ここさえ取れば勝利となる重要な局面。
どんなサーブを打つのか、究極の選択になる。
隼人さんが選んだのは――奇しくもこの試合の一ポイント目と同じセンターへのサーブだった。
そのサーブをビート選手はまるで読んでいたかのようにバックハンドで捉えるた。ジャストミートしたボールはサーブの体勢から立ち直れていない隼人さんのはるか遠く、しかしコート内にバウンドした。
一ポイント目のサービスエースはマッチポイントにて、リターンエースに塗り替えられた。
……恐ろしいことに、気がついてしまったかもしれない。
試合開始直後の一ポイントとマッチポイントの決まれば勝敗が決まる一ポイント。同じ一ポイントだが、その価値には天と地ほどの差がある。
もし、この試合最初のサービスエースがビート選手に意図的に見逃されたものだとしたら。
初球でのサービスエースという強烈な成功体験を元に、意識的か無意識的にかは分からないが重要なところで同じようなサーブを打つよう、隼人さんを誘導していたとすれば。
全ては憶測でしかない。でも、もしこれが事実だとするのなら、世界ランキング一位がどれほど遠いのか。それすらも分からなくなってしまう、そんなポイントだった。
目指せBIG5―テニスの神に転生させられた件 夏冬 @sarako
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