第6話
そして、辺りには静寂が戻った。
雪の降る遊歩道に人影はなく、最初から俺しかいないようだった。
思い返すと、やはり現実味のない話だった。二人が消えてしまった今となっては、すべての出来事が夢か幻のように思えてくる。そう思った瞬間、臥威に殴られた頬がズキリと痛んだ。
「ってて……あの野郎、思いっきり殴りやがって」
口の中から血の味がした。この様子では中はズタズタになっていることだろう。しばらくはまともに飯が食えない気がする。
時計を見ると、時刻は21:00。あと3時間ほどで今年も終わりだ。
(わたしに歌ってくれたように、これからも誰かにその歌を届けてあげて)
音々の言葉を思いだす。その言葉があれば、まだ自分も頑張れる気がした。
「日々は回るよ、回ってく――」
俺は馴染んだフレーズを口ずさみながら、誰もいない遊歩道を後にした。
明日になったら、久しぶりに初詣に行ってみよう。
あのチンチクリンで生意気な、歳神さまに会うために。
歳神さま、ランナウェイ 古代かなた @ancient_katana
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