のらねこミーのまほう

家猫のノラ

ぼうけんのはじまり

そのとしのはつゆきがふったひ、ミーはのきしたでうまれた。

ふつうならニャーとうぶごえをあげるところだが、そのひはなんせさむすぎたから、そこまでくちがひらかなかった。

だからミーとないたのさ。

だからミーはミーなのさ。


ミーのおかあさんとおとうさんはミーとよんひきのきょうだいをたいせつにそだてた。

のきしたで、ちいさなあたたかいかていがはぐくまれていたんだ。


ミーがおっぱいをそつぎょうしたころ、ねこさらいがミーたちののきしたにやってきた。


ねこさらいというのはそのなのとおりねこをさらう。そしてねこをつかいまにしているまじょにうってしまうんだ。


ミーはげんきなねこだった。

だからかぞくがみんなのきしたでまるくなるなか、いっぴきそとであそんでいた。


あそびつかれて、のきしたにかえろうとすると、ものおとがしたので、ミーはとっさにかくれた。

「ねこがろっぴきだな」

「くそっひっかかれた」

ミーはおおきなねこさらいたちが、かぞくをなわぶくろにいれて、ほうきのさきにぶらさげていってしまうのをみた。

ミーはこわくてかなしくて、ミーとないた。


ミーはずっとないた。そのこえはのきしたのうえ、このうちにすむおとこのこのへやまでとどいた。


「どうしたの?」

おとこのこはほっぺをまっかにして、しろいいきをはきながら、ないているミーにこえをかけた。

「おかあさんが、おとうさんが、おねーちゃんが、おにーちゃんが…!!」

ミーはなきじゃくってしまった。

するとおとこのこがミーをだっこした。おとこのこのうでにつつまれて、おとこのこのしんぞうのおとをきいて、あったかくって、ミーのなみだはしぜんにとまった。

「ねこさらいにさらわれちゃったの」

おとこのこのミーをだっこするうでがすこしこわばった。

「きづけなくてごめん」

ミーはなんだかまたなきそうになった。

「…ううん。ありがとう。おかげでおちついた。ぼくはたすけにいく」

ミーはおとこのこのうでからすりぬけて、まだのこるゆきのうえにしっかりとよんほんのあしをつけた。

「おれもてつだう」

おとこのこはてをのばした。

「おれはゆう。きみは?」

ミーもてをのばした。

「ぼくはミー」

ミーとゆうはあくしゅをかわした。


ミーははながきく。いぬにはかなわないけど、かぞくのにおいをおうぐらいかんたんだ。

だけどながいみちをあるくのは、いくらげんきなミーだってたいへん。

こういうときはゆうくんのながいあしがやくにたつ。

ミーはゆうくんのポーチにはいり、かおだけだしてはなをひくひくさせていた。


やがてめのまえに、たかいくろいかべにかこまれたたてものがあらわれた。

ぐるっとまわってみたけれど、いりぐちはない。

「ゆうくんどうしよう、においはこのなかからする…」

かべはツルツル、だけどところどころにつたがはっている。ずーっとずーっとうえのほうにこまどがみえた。

「そっか…ねこさらいたちはほうきでそらをとぶんだ…」

いくらねこでもあんなところまでとべない。

このかべのすぐむこうがわにかぞくはいるのに。

「ミー、たかいとここわい?」

ミーがまたなきそうになっていると、ゆうくんがニヤッとわらっていった。

「え?」

ミーにはなにをいっているのかわからなかった。

「のぼるぞ!!」

ゆうくんはてぶくろをはずして、つたにてをかけ、あしをおき、かべをのぼりはじめた。


「ミーはなんのたべものがすきなの?」

「ぼくはハムがすき。ゆうくんは?」

「おれはかまぼこ」

「カマボコってなに!?たべたことない」

「さかなをすりつぶしたやつ」

「おさかな!!たべてみたい!!」

「かえったらかぞくぜんいんにあげるよ」

「やったー!!」

ミーとゆうくんはおしゃべりをしながらかべをのぼっていた。

「じゃすきなあそびは?」

「ゆきあそび!!」

「ゆきあそびか、なにするの?」

「ゆきにかおをうずめたり、おにーちゃんたちとゆきがっせんしたり、ゆきだるまつくったり!!」

「かえったらおれもまぜてよ」

「うん!!」

のぼってものぼってもさきはながい。

だけどもうすこしだ。

「ねぇ、ミー、のきしたはさむくない?」

「うん、まあね。おねーちゃんがこのまえかぜをひいちゃってたいへんだったんだ」

まどのふちにゆうくんのてがかかった。

「ねぇ、かえったら、かぞくみんなでうちにきなよ」

まどがあけられ、いっきにあたたかいくうきにつつまれた。

ミーのかおはまっかになった。


ゆうくんはすりきれたてのひらをミーにかくしながら、たてもののなかをみまわした。

こまどからゆるやかにらせんかいだんがのびていて、かべにはたくさんのやくそうやびんずめがならべられている。したひがたかれている。

ミーのかぞくは?ねこさらいは?まじょは?

やにひっそりとしていてぶきみだ。

「ゆうくん!!」

ミーがさけんだ。

ゆうくんはとっさに、ミーがはいったポーチをちゅうにほうった。

ねこさらいたちがゆうくんのうしろからなわぶくろをかぶせたのだ。






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のらねこミーのまほう 家猫のノラ @ienekononora0116

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