「意味」を求める中で渦巻くさまざまな感情
- ★★★ Excellent!!!
第一部から続く物語として、第二部では二人の主人公の成長に焦点が当てられています。
剣士アスターは第一部では「守護者」としての立場にありました。しかし、先の亡国の王子クロードがそうであったように、国を失ったからといって民がすべて滅んだわけではありません。かつて「防国の双璧」の一人として名を馳せたアスターのもとには、当然ながら生き残った旧知の者たちが訪ねてきます。
メルが自ら「もうアスターに依存しない」と口にしたあの瞬間、彼の中で「守るために剣を振るう」という信念には大きな綻びが生じます。グリモア王国へ赴いた後はなおさらで、外面だけを求められる現実の中で、自身の弱さを埋め、心そのものを強くする必要に迫られるのです。
……とはいえ、正直に申し上げると、アスターの過去への葛藤を見て抱いた第一印象は「中二病っぽい……いや、若すぎる。こんなに幼い子どもみたいだったのか」というものでした。二十代とは思えないほどです。
けれど、その後に各種の回想によって彼の歩んだ道のりが補われていくにつれ、私はむしろ「外からの圧力に押され、大人にならざるを得なかった子ども」だったのだと感じるようになりました。大人からすれば取るに足らない悩みであっても、子どもにとっては自我を形作るうえで極めて当然の葛藤なのだと。
むしろ年長者の視点から見ると、このような迷いは羨ましくすらあります。そこには、生命への情熱と探求があるからです。もし私自身なら「そうなんだ」と心を動かされることなく選択してしまうでしょう。
「迷い、悩むことを許されている」という状況そのものが、ある意味とても貴いのだと思います。
一方のメルの成長曲線は、とても明るく印象的です。まず奴隷管理局による誤解(ちゃんと説明したら死ぬんでしょうか?)から逃亡を余儀なくされ、憧れの女優フレデリカとの旅路へと繋がっていきます。
メルは送魂ができないこと、読み書きをうまく学べないことから、自分の存在意義に疑問を抱いていました。しかし王都への旅の中で、演技の才能を発見し、さらにフレデリカたちの導きによって「無理に意味を与える必要はない」という気づきを得るのです。
最後に枷が解き放たれる場面は、本当に祝福に値するものでした。
メル、おめでとう。生きていることそのものに、理由など必要ないのです。
さて、ここからはグリモア王室についてお話ししたいと思います。この一家には、どうしても言いたいことが山ほどあります。
最後にミニ外伝で王室兄弟の心情補足があったとはいえ、私は依然として王子たちがとても偽善的に見えました。
ひとつは、あの兄妹以外の王族は皆知っていたという秘密の抜け道の存在。
もうひとつは、兄弟の会話から察するに、国王はこの事態を予見していた可能性があり、あえて二人を情報から排除していたという点です。
正直に言えば……その状況でエヴァンダールが発狂しなかっただけでも、私は彼を「よく耐えた」と思っています。「お前など一度も家族と見なしていなかった」──その残酷な事実を、ずっと承認を求め続けてきた子どもの顔に叩きつける行為です。
憎むというより、私は彼の境遇をひどく哀れに感じました。現実にもこのような例は数え切れません。恵まれた出自、裕福な暮らし……それでも悪行に手を染めてしまう者。そして当然のようにその者を断罪する家族たち。
「これほど何もかも与えたのに、どうしてそんなふうに堕ちてしまったんだ!恩知らずのどうしようもないクズめ!」
「あなたは何もかも与えたと言うけれど……愛だけは一度もくれなかったじゃない!!」
……こうしたやり取りは、古今東西繰り返されてきました。
だからこそ、怒りよりも深いため息が出てしまうのです。
そのため、私はエヴァンダールの行いと国王の行いを分けて考えています。
エヴァンダールの罪は許されるべきではありません。しかし「第三王子を育てた環境」を作った国王こそ、この物語における元凶の一人なのだと感じています。
侍女との間に兄妹をもうけながら、どうして城の者たちが彼らの母を追い出すのを放置したのでしょうか。支配者の驕りから、取るに足らない感情を軽んじ、事態を放任した結果なのでしょうか。理由がなんであれ、国王の末路は自ら招いた報いと言えるでしょう。
一方、エヴァンダールへの報いは、すでにカトリーナの手を通して彼に返ってきました。生き延びはしたものの、念入りに積み上げた成果はすべて失われ、双子としての象徴でもあった容貌すら奪われました。妹の執念に囚われた彼が、今後幸せに暮らせるとは到底思えません。
アスターが差し伸べた手を、エヴァンダールが一瞬でも掴もうとしたことは、彼の中にまだ救い得る余地があった証かもしれません。
しかし、善意を受けてもなお裏切る者は世に多く存在します……。
このあたりは作者のご意図次第でしょう。善と悪は、まさに紙一重です。
そして──数々の枷から解き放たれた剣士と少女は、再び新たな謎に直面します。
メルが枷の下に隠していた紋章は、アスターのかつての相棒・ルリアのものと同じでした。奴隷であったルリアは、公爵家の一人娘として偽装され、ノワール王国にとって都合のよい駒として利用されていたのです。
亡者の起源、ノワール王国から流出した魂関連の技術──
未解決の疑問のすべてが、次なる物語の出発点を示しています。
剣士と少女の物語は、その結末にどのような答えを迎えるのでしょうか。
すべての絡まりが、次の第三部で解き明かされることを心から期待しています。