第17話 事後

 多くの命が失われた。

 突如、村を襲ったバケモノたちの手により、兵士は皆殺され、村の老若男女問わずに惨たらしく殺された。生き残りはごくわずか。

 その凄惨な光景に、駆け付けた騎士団やクレイアは苦悶を浮かべ、怒りと涙がこみ上げそうになった。

 どうしてこんなことになったのか。

 そして、ユーキが全滅させたバケモノたちは、騎士団の誰もが見たこともない未知の存在だった。

 一体ぐらい捕獲しても良かったかもしれないが、ユーキの怒りを抑えられなかった気持ちや、兵士たちを皆殺しにするほどのレベルのバケモノたち相手に加減できなかったということも納得でき、クレイアたちも「仕方ない」と思うしかなかった。


「では、クレイア殿。馬車をお借りする。生き残った彼女たちは僕が王都へ連れて行く」

「ご苦労だったな、ユーキ。事後処理については我らが。遺体も私たちが弔おう……しかし、彼女たちの護送は別にお前が自らしなくても我らが……」

「い、いや、彼女たちは傷つき、そして今もまだ恐怖に怯えている。だ、だが、勇者である自分が傍にいることで僅かながらでも安心してくれるようなので、ここは自分が行くしかないと思った次第だ」


 クレイアたちが駆け付けた時にはすべてが終わっていた。

 駆け付けた時には僅かに生き残った若い娘たちが、一つの民家の中に集まってユーキに介抱されていたようだ。

 その娘たちを見てクレイアたちはハッとした。

 血と腐臭が蔓延していたはずの村の中にしては「生臭い匂い」と、乱れた衣服と足腰が震えていること。

 その理由はユーキ、そしてユーキと一緒にいたノアとココアから説明されて心が抉られそうになった。


――バケモノに凌辱された


 と。

 クレイアは同じ女として、そのことを深く聞こうとはしなかった。

 だからこそ、そんな地獄を見た娘たちが僅かでも心が安らぐのなら……

 

「お兄ちゃん」

「ユーキ様ぁ……」

「あん、ん、勇者様ぁ」


 少し幼さのある娘、ユーキと同じ歳ぐらいの娘、20代ぐらいの少し年上の女、皆がなかなかの美人で、ユーキに艶のある視線を向けながら寄り添おうとしている。

 

「……む、むぅ……まぁ、そうだな。お前は優しいからな……分かった、ユーキ。彼女たちを頼む。襲撃してきたバケモノたちについても聞きたいが、今はわずかながらでも生き残ってくれた民に癒しを……」 

「御意」


 いつもなら、クレイアはムッとするところであった。

 上流貴族の娘であり、そしてユーキの婚約者で幼いころから想いを寄せている身として、身分違いの平民の女がユーキに寄り添って雌の顔をするなど、「身の程知らずめ」といつもなら睨みつけるところだった。

 ユーキがモテるのは仕方ないが、ユーキの女になるのはこの国の姫、そして自分、更には自分たちのような王族貴族の優れた血筋の者たちでなければならないと思っている。

 だが、それでもクレイアとて鬼ではない。

 凌辱されて心も体も傷ついた娘たちが、自分を救ってくれた勇者に憧れ、そしてまだその傍にいて安心したい、また誰かから襲われるかもしれない恐怖もあるだろう。

 そういった理由から、まだユーキの傍に置いてやった方がいいだろうという同情心から、あえてクレイアも目を瞑った。


「そなたたちも、つらかったであろうが、どうか心を強くしてほしい」


 だからこそ、クレイアも被害を受けた娘たちに優しく語りかけ、その言葉に娘たちもコクリと頷いた。


「ふう、では行こうか……………はぁ……自分は本当に何を……」


 だから、そのときクレイアは……


「えへへへ、何とかバレずにすんだね~、ユーくん」

「しっしっしっし、いけねーし~、許嫁かわいそ~。でも~、次はあーしも参加すっから~」

「お兄ちゃん……私、まだまだだめ……ねえ、もっと忘れさせて」

「ユーキ様……穢されている私の子宮の中身を全部入れ替えてください……どうかご慈悲を」

「勇者様ぁ~、馬車の道中で……その、よろしいですよね?」

「私も!」

「彼が殺されて……もう何もかもが嫌になって……だけど、勇者様が……」

「もう、一回じゃ我慢できません」


 ユーキと助かった女たちがそんな会話をしていたとは夢にも思わなかっただろう。


「さて……それにしても、このバケモノたち……獣人なのか魔族なのか分からんが、一体どこから現れたのやら……こんな種族は見たことないが……レベル50近くとのことだったが、もしそれが本当に10体……いや、こいつら以外にももし居るとしたら……とてつもなく厄介だぞ」


 だから、ユーキたちを見送った後、クレイアは真面目に任務に努めた。

 惨たらしく蹂躙された村人たちの亡骸を集め、同時にユーキに始末されたバケモノたちの遺体を調べる。

 

「ん? 皆、ちょっと来てくれ!」


 そのとき、同じようにバケモノたちの遺体を調べていた騎士の一人があることに気づいて皆を呼んだ。

 そして、比較的損傷の少ないバケモノ遺体を指さし……


「筋肉や顔などが色々と変形してしまっているが……関節の位置や内臓の位置……指の本数……どれも獣人や魔族とはまた違う。というより、奴らは『人間とは違う構造』の身体をしている。だが、このバケモノたち……それらより、むしろ……」


 それはバケモノというより……


「人間と体の作りが同じではないか?」


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