異星人の僕は地球に住む彼女を三分以内に連れ去りたい
カエデネコ
異星人の僕は三分後に旅立つ
異星人の僕は三分以内にやらなければならないことがあった。
宇宙船は三分後に遠い母星へ帰るために出発する。
だけどこの青い地球に住む彼女を連れて行きたい。
『他の星から来た人だったなんて…』
宇宙の闇のように濃い黒い目をした彼女は驚いているのか丸い目をして僕を見返してくる。そうだよな。まさかいきなりこんなこと言われたら、そんな反応だよな。だけど必死で僕は懇願した。
「時間がないんだ。宇宙船が出発するまで、三分しかない。一緒に来てほしい。君と離れたくない」
僕は研究者で、地球人の生態を調べるために来ていた。こんな辺境の星に来るなんて左遷だよ。やる気ないなぁと思っていたのに、彼女に会ってからそんなこと吹っ飛んだ。ここに来れたことを神様に大感謝だよ。
僕は手を伸ばす。彼女からは手が伸びて来ない。でも泣かれたとしても、無理やり連れ去りたいんだ。
ああ……もう時間がないんだ。説得は諦めた!仕方ない。ごめん!と彼女へ踏み込んだ。返事は待てなかった。
抱き抱えると、やめて!と暴れる彼女を無視して宇宙船へ乗せた。
ちょうど出発の合図が出た。危なかった。もう彼女は暴れていない。僕の腕の中で大人しくしている。
「時間ギリギリだったぞ!三分経っても乗らずに地球を選ぶのかと思った。その執着してるものはなんなんだ?母星に連れてくのか?」
同乗している他のやつがあきれたように言った。
「いまさら、離れられるか!めちゃくちゃ可愛いんだ!大好きなんだ!」
ニャアと腕の中でモフモフの黒猫が鳴いた。
「良いけど、生物の生態研究するなら、許可書とっておけよ」
「研究材料呼ばわりするな!彼女はちょっとそこらの猫とは違うんだ。美猫だろ!?この黒いピカピカした毛並みを見てみろよ」
同乗者は肩を竦めると、別室へ行ってしまった。
宇宙船から黒い空間にポツリと光る青い地球が見えた。それはどこか寂しげにも思えた。
僕の腕の中には地球猫。一緒に居てくれてありがとう。
異星人の僕は地球に住む彼女を三分以内に連れ去りたい カエデネコ @nekokaede
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