第7話

「タカヤ!」

「あなた!!」

「パパぁ」

ああ、妻だ。そして、二歳になる息子。

 それから、

「リョウジ……」

ぼやけた視界に映った妙に懐かしい顔。

「お前、老けたなぁ……」

「阿呆」

思わず零れたセリフにそう答えて、リョウジは、大人になったリョウジは、僕の頬をぺちんと叩いた。

「きゃあ、リョウジさん!」

妻が怒っている。息子もぽかぽかとリョウジを叩いていた。医者と看護師がそれを見て大丈夫ですよと笑っていた。


 どうやら僕は事故にあって気を失っていたようだ。リョウジがお前まで車と仲良くなるなんて阿呆だと言って怒っていた。幸い、僕は後遺症もなく、骨折と打撲と擦り傷だけで済んでいた。

「なぁ、リョウジ」

「んん?」

病院の庭でリョウジが缶コーヒーをすすりながら億劫そうに返事をした。

「僕たち、これで、良かったんだよな」

そういうと、リョウジは一瞬、コーヒーを吹き出しそうになった。

 それから、驚いたような顔をして、じっと僕の顔を見た。僕もリョウジを見た。きっと今、お互いにあの頃の面影を見てる。あの、ランドセルを鳴らして、走っていた頃の、面影を。

 そして、リョウジはふっと笑った。

「うん」

短く、静かな、答え。

 僕もそれに頷いた。


そう

それはそれで、良かったのだと、今なら、分かる。

君にもきっと、いつか、分かる

遠くて近い時間の彼方の君へ

近くて遠い、時間の彼方の僕より


青く澄んだ空を、僕らは仰ぎ見た。


あの頃の僕らが、笑って手を振っている様な気がした。

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あの頃の、君と @reimitsuki

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