Zee

飯田太朗

Zee

 豆腐くらいだ、と言われた時、私は豆腐が何か分かっていなかった。

 豆乳を固めたものだ、と言われた時も豆乳が何か分からなかったし、豆乳が大豆から作られることが分かってもなお、何でそんな複雑な工程を踏んでまで大豆を食べたがるのか分からなかった。

 ちなみに大豆には毒性がある。毒性を強くした大豆を、ラットに与えると成長阻害や膵臓肥大などの障害が出ることが分かっている。つまり、人類は、元々毒のあるものをわざわざ加工して食べようとしたのだ。

 さて、私は今、食べている。

 豆腐くらいの柔らかさのものを。

 音がする。粘着質な。

 懐かしい感じがする。多分、私の祖先はこうやって食べていた。

 骨を割り、中をほじくり出し。

 血をすすり、真っ赤な口元を拭って。

 脳みそを、食べるのだ。

 博士。博士。岩瀬博士。

 私は博士の名を呼ぶ。心の中で、縋るように。

 美味しいです、博士。

 私に脳みそをほじられている、冷たい骸。

 岩瀬いわせ直臣ただおみ博士。遺伝子学の権威。人類と類人猿の間にある「黄金のリンゴ」を探し求め、研究し続けた学者。

 彼の脳みそを、私は食べている。すすりながら、咀嚼しながら。

 味は。

 美味い。


 *


「命は平等であるべきだ。人を殺すのも虫を殺すのも同じ命の喪失だ。ああ、もちろん、個体や集団ごとによる命の比重というのは存在する。母は子の命を自らの命よりも重く扱うし、自国の人間が死んだのと他国の人間が死んだのとでは感じるものも違うだろう。しかしそうであっても、やはり命というのは平等であるべきだ。命はその個体につき一つしか所有し得ないものだろう? 人間にだって一つ、虫にだって一つ。それを侵害するのは如何なものか?」

 そう嘯きながら博士はメスを動かす。顕微鏡を覗きながら、繊細な手つきで。

 私が見ているモニターには、顕微鏡の中が映されている。モニターには丸いものが写っている。胚だ。オランウータンの受精卵から発達したもの。博士はその胚にメスを入れた。当然、命が絶える。

「ほら、また一つ、命が果てた」

 楽しそうな博士。命になろうとしていた胚が潰れる。ただの細胞の塊と化したそれを見て、私は思う。

 私も昔は、ああだったのか。


 *


「あなた、うっかりさんだわ」

 ハニーがそう、伝えてくる。

「今日の実験、ひどかった」

「悪かったよ」

 私は謝る。

 ハニーは手話が使える。

 私もだ。と、いうより私もハニーも、意思疎通の手段は手話くらいしかない。私の場合、ペンやキーボードを用いた筆談が可能だが、ハニーにはそこまでの知能はない。そりゃそうだ。だって、オランウータンなのだから。

 開けた。

 閉めた。

 開けた。

 閉めた。

 開けた。

 管理表に記している、ハニーの檻の開閉記録だ。ハニー含め、研究所で飼育している仲間たちを檻から出して実験すれば「開けた」。そして実験に参加してくれた仲間たちを再び檻に入れれば「閉めた」。

 オランウータンのハニーはそんな仲間の一人だった。密猟者に親を殺され、生きる力を失くしていたところをフィールドワーク中の博士に助けられ、ここに来た。もう長い付き合いだ。

 私がエスコートしてハニーを檻に入れると、彼女が腕をせわしなく動かした。拙い手話でだいたい次のようなことを伝えてくる。

「よくないことが起こりそうな気がする」

 私は訊き返す。もちろん手話で。

「よくないことって?」

「分からない」

 まただ。こういうことはよくある。

 私は彼らのお仲間なのに、今のように話の肝心なところが分からないことが多々ある。野性的な部分を多く残している彼らと、野性から離れてしまった私との間には奇妙な隔たりがあるのだ。その隔たりが何なのか、いつか研究してみたいとは思うのだが。

 ……私が彼らを「仲間」と呼ぶのには理由がある。

「今日も毛並みが綺麗ね、ジー」

 ハニーがお世辞を言ってくる。こういう子なのだ。おべっかが上手い。私は手を動かして返す。

「ありがとう、ハニー」

 毛並み。毛並みが綺麗な、「私」

 私はチンパンジーだ。いや、チンパンジーだった、と言うべきか。私の誕生には少々複雑な事情が絡んでいる。少し手間だが、まぁ、説明しよう。

 ARHGAP11B遺伝子。

 ヒトとチンパンジーの遺伝子は九十九%が一致している。では残った一%は? その一%をチンパンジーに与えてみたら? そんな実験をしたのが我が師、岩瀬直臣博士だ。

 ARHGAP11B遺伝子。

 人と猿とを分けた因子である「一%」の遺伝子の中の一つ。「知恵の実」遺伝子とも言われている。博士はこの遺伝子を、人工授精させたチンパンジーの受精卵に組み込んだ。そしてその受精卵を私の母の子宮に植え付け、出産を待った。

 果たして私が生まれた。人間のように肥大した脳を持ったチンパンジー。広義の意味での、ヒューマンジー。生憎私はヒトとチンパンジーのハーフではないのだが。ヒューマンジーという言葉は本来人間とチンパンジーのハイブリッドに与えられる名前だ。

 ジー。私はそう呼ばれている。チンパンジーのジー。ヒューマンジーのジー。どっちのジーなのかは今のところ分かっていないが、とにかくジー。博士もハニーも、そして研究所で飼育されていて、手話やボタン操作などで意思疎通ができる生き物は全て、私のことを「ジー」と呼んでいる。いつ頃からそう呼ばれるようになったか全く覚えていないが、少なくとも私が自我を持つようになった頃にはそう呼ばれていた。だから多分、多くの人間がそうであるように、生まれた時からつけられていた名前なのかもしれない。

 小笠原諸島、と言うらしい。岩瀬博士が研究室を構えているこの島が所属するものは。

 島の名前自体は知らない。ある日「ここはどこか?」と訊ねた私に対し博士は「小笠原諸島と呼ばれる島々の一つだ」という説明をしてくれた。言葉を覚えたてだった私は「オガサワラショトウ」という音が何を意味するのか分からなかったが、平仮名を覚え、片仮名を覚え、そして漢字を覚えた頃になってようやく分かった。今は一応、簡単な英語も扱える。後は先程から使っている手話。

 手話は飼育している類人猿との意思疎通のため、そしてペンやキーボードといった筆談の手段がない時の博士との意思疎通のために覚えさせられた。

 ハニーを含め、類人猿に手話を覚えさせると、多くの場合は定型の手話ではなく、その猿オリジナルの手話が混ざったりして対ヒトのやりとりが難しくなることがある。その点私は、猿の表情や感情、興奮度合いなどから手話の繊細なニュアンスを感じ取ることができる。この日もハニーは独特の、「ハニー方言」とでも言うべき手話で話しかけてきた。彼女は何かを心に抱えている時、この方言が強くなる。今もなかなかに訛った手話で話しかけてきた。私もハニー方言で応じている。

「外は? 嵐?」

 ハニーが訊いてくる。私は手話で返す。

「そうみたいだね」

「嫌な予感ってもしかしたらこれかも」

「この時期なら嵐はよくあることだよ」

 実際、夏の嵐なんてものはしょっちゅうで、研究所では対台風用設備はデフォルトであるくらいだった。しかしハニーは続けた。

「でも、変な音がする」

 音。

 ハニー含め実験動物たちは繊細だ。細かなことに気づくし、細かなことで傷つく。私はいつも、ハニーたち(ゴリラのドンゴ、イッサク、オランウータンのハニー、ユキ、ボノボのスク、チンパンジーのダン)に対し細心の注意を払って接している。その点岩瀬博士はやっぱりヒトで、感覚がつかめないのだろう。実験動物に対しぞんざいな態度をとることがある。

 多分、だが。

 彼にとってはネズミもハニーも、同じ「動物」なのだろう。

「君がそう言うなら」私は開閉管理表を脇に置いて続けた。「ちょっと外の様子を見て来ようかな」

「いってらっしゃい」

 ハニーは何故か、嬉しそうだった。


 *


 雨が降る中、外に出る。

 外に出ると言っても、研究所の玄関からちょっと頭を出すくらいで、この大雨の中に体を差し出したりはしない。

 研究所の玄関からは急な坂道が一本、二十メートルほど続いていて、その先には小さな防波堤があった。坂道は防波堤と防波堤の隙間に続いていて、その隙間からは浜辺の様子を見ることができた。私は研究所の玄関から首を伸ばした。

 夜。しかし嵐の夜というのは何故かほんのり明るい。事実私は少しまぶしささえ感じながら外を見つめていた。そんな光の粒と粒の間。異変は綺麗に、転がっていた。

 人。

 人である。

 浜辺に人のようなものが倒れている。

 それもいくつか。

「おい、ジー」

 私が奇妙な人影に気づいたのと、博士が背後から話しかけてきたのとはほぼ同時だった。私は人のような複雑な発声器官を持たないからしゃべることはできないが、しかし耳はついているので博士の口語は理解できた。慌てて振り返る。博士は研究室から玄関に通じる廊下にひょっこり頭を出してこちらに話しかけていた。

「今日の台風は強い。もしかしたら何か壊れるかもしれないから、用心してくれ。既に通信機器がやられていて、一週間後の物資供給まで、ここは完全に……」

 私は博士の言葉を待たずに手を動かした。手話だ。

「博士、あそこに人影が……」

 博士は目をしばたかせた。そしてすぐに研究室に引っ込むと、大きめのレインコートを二着、持ってきた。

「どれ」

 眼鏡を掴んで遠くに目をやる博士。私と同じように、浜辺に倒れた人影のようなものを見つけたのだろう。少し慌てた口調で私に指示を飛ばしてきた。

「レインコートを着ろ。もしかしたら、人命救助だ」

 私は博士の指示に従った。


 *


 果たして私たちは四名の人間を救助した。浜辺には以下の人間が倒れていた。

 三木谷みきたに麻希まき。女性。

 柴田しばた真奈美まなみ。女性。

 細田ほそだ義人よしひと。男性。

 千屋せんや郡平ぐんぺい。男性。

 どれも観光客のようだった。それはつまり、これらの男女は何かの職業を表すような特殊な服装をしていなかったというわけで、およそ機能面という点からすれば非常に不合理な格好をしていたからである。

 まず女性が目を覚ました。三木谷、柴田の順番。博士が名前を聞いた。次に男性。千屋、細田の順番。やはり博士が名前を聞いた。

「残念なお報せがある」

 全員が目を覚まし、ずぶずぶに濡れた服に対する不快感を表せるくらいには回復してきた頃になって、博士は告げた。実に簡単な内容だった。

「君たちが来て、この研究所は想定の三倍の物資が必要になった。食料や水は一日一食としても四日か五日分しかない。次の物資供給日は一週間後だ。通信機器もやられているから救難信号も出せない。ぎりぎりの生活を強いられる。私からのお願いとしては、あまり騒ぎ立てせず、大人しく、救助が来るのを待ってほしいということだ」

 沈黙。事態を飲み込むのに少し時間がかかっているらしい。だが、やがて女性(三木谷)が口を開いた。どうやら彼女は多少聡明なタイプだったらしい。

「救助、感謝します。研究所、とおっしゃいましたがここは……」

「私の研究所だ」

 と、博士。簡単な話だ。

 三木谷はちらりと私を見る。

「この猿はどうして白衣を……」

 私はすたすた歩いて部屋の片隅にあるパソコンの前に行った。簡単な操作をして、プロジェクターを動かし壁をスクリーンにする。そして打ち込む。その様子を、助けられた四人のヒトは驚いた顔をして見ていた。私は構わず打鍵する。

〈私は、ジー〉

 続ける。

〈話せます。猿だと呼ばれるのは心外です〉

「ご、ごめんなさい」

 三木谷が謝る。

「あなた賢いのね」

「賢いなんてものじゃないね」

 博士が笑う。

「多分君たちの誰よりも知性を持っているよ」

「ハッ」男(細田)が笑った。「芸でも仕込んでるんだろ」

〈心外です〉私は打鍵する。〈ホソダ、は細田、ですか? 不愉快です。もう一度海に放流されたくなかったらその不遜な態度を改めてください〉

「ふ……何て読むんだあれ」

 どうやら細田は「不遜」が読めないらしい。私はキーボードを操作して、「不遜」に読み仮名を振ってやる。

「……どうだね。ここまでやっても彼が私に芸を仕込まれた猿だと思えるか?」

 細田が黙った。博士は小さく笑った。

「ここではジーに人権を認めている。つまり君たちと同じく個体として権利を尊重されているわけで、彼にも君たちと同様に命を大事にする権利も、快適に暮らす権利も与えられている」

「何でこのチンパンジーはこんなに賢いんですか?」

 さっきとは別の男(千屋)がつぶやく。博士が丁寧に、私が生まれた経緯について説明する。私としては至極真っ当な話のように聞こえたが、ここに助けられた人間たちはそうは受け取らなかった。

「そ、そんなこと……」

 千屋が息を呑む。

「そんなこと、あっていいのか? チンパンジーの脳みそを弄ったってことだよな? 倫理的な問題がある。外部に知らせたら、どうなるか分かってるんだろうな」

 すると博士が笑う。

「人がほとんど来ない小笠原諸島の片隅に人間の言葉を介するチンパンジーがいると言いふらすのかね? 構わんが厳重な管理をされるのはおそらく君の方だと思うぞ」

 厳重な管理。おかしかった。

「諸君はここの床で寝てもらう」

 博士が淡々と続けた。

「私とジーにはベッドがあるが、君たちの分はないんでね。寝袋の類もないが、そこにあるレインコートや白衣なんかは好きに使ってくれて構わないよ。男性諸君、女性に対してよからぬことは考えないように」

「ふざけんじゃねぇ。猿にベッドがあって俺たちにはねぇのかよ」

 細田がわめく。私はキーボードを操作する。

〈その猿の体毛がついたベッドでよければ使っていただいて構いませんが〉

 壁のスクリーンを見て、細田が悔しそうに黙る。それを見た博士は愉快そうに笑って研究室を出ていこうとした。

「諸君、ごゆっくり。トイレはあっちだ。ジー。部屋に行こう」

 そういうわけで、私は博士と一緒に、自分の部屋へと向かった。


 *


 自分の部屋、と言っても博士の自室はやっぱり研究室だ。試験管や、実験動物を入れておくためのアクリル板で作られたケージなんかがある。

 博士の部屋は三区画。一区画はプライベートスペース兼論文執筆、試験管操作などを行える簡易研究室。二区画目は観察室。三区画目に当たるアクリル板の檻の中に入れられた実験動物の観察が行える。博士は基本的に一区画目で寝ている。

 私の部屋については、博士は「何だか女の子の部屋みたいだな」と言っていた。「女の子の部屋」がどんなのかは全く想像がつかないが、しかし私の部屋の特徴と言えば大小様々なぬいぐるみが置いてあることだ。きっとこれが「女の子らしい」の定義に違いない。

 私は着ていた白衣を脱いで、ぬいぐるみを抱き、ベッドに転がった。固いマットレス。でも私はこの固さが気に入っている。何度かぬいぐるみ……ジェシーを叩く。ぼすぼす。音がする。この音が好きだ。何度も殴る。ぼすぼす。ぼすぼす。

 眠りについたのはおそらく夜の十一時頃だった。記憶はない。

 だが、その二時間後、夜中の一時には目を覚ました。

 乱暴な音が聞こえてきたからだ。

 多分、ドアを思いっきり閉めた音。

 聞きようによっては壁を思いっきり殴ったような音ともとれた。私は飛び起きて、少し辺りを見渡した。やがてその音が隣室、つまり博士のいる部屋から聞こえてきた音だと思い至ると、ぬいぐるみのジェシーを持って、白衣をひっかけ、部屋の外に出た。廊下は夜の闇が支配していた。

 しかし私の鼻はすぐに異変を感知した。鉄の臭い。生臭い臭い。そして、何だか分からない、濃厚な臭い。

 歩く。私の足の指が粘着質な音を立てる。何かが迫りくるような気配がした。何度か、私の意識は背後に飛んだ。

 暗闇の中を歩く。

 ひたひた、響く。私の足音。裸足だからだ。私は靴を履いたことがない。足も手のように使える私にとって、靴は足の使用を制限する窮屈な袋に過ぎない。

 隣室。博士の部屋に入る。

 生臭い臭いが濃くなった気がした。それは明らかに血の臭いだった。私は歩調を緩めて博士の部屋に入った。部屋は真っ暗だった。

 長いこと人間である博士と生活してきたからだろう。私の目は暗闇に弱くなっていた。ハニーやドンゴは夜更かしさんなので夜目が利く。他の子たちは早々に寝てしまうのだが、いくらか野生の感覚を持っているだろうから私より暗闇に順応しやすいだろう。

 暗闇の中で目視ができない私は壁に手を這わせて照明のスイッチを探した。目を慣らすのよりさっさと明かりをつけてしまった方が早い。少し壁の表面を彷徨った私の手は、やがて硬質なものに当たり、そしてスイッチを入れた。光が闇を駆逐し、そして後に残ったものを私は見つめた。

 博士だった。いや、厳密には博士だったものだった。

 血。それは滴っていた。ベッドから。枕から。寝台の上から床に、ぽつぽつと。そして床に……血溜まりを作っていた。

 意外なことに、私は冷静だった。

 何が起きたかは一向に分からなかったが、しかし分かっていることがあった。

 食べなきゃ。

 それが必要なのは明確だった。そうじゃないといけない気がしていた。だから私は、床に滴る血も、生臭い臭いも何もかも無視して、手にしていたぬいぐるみを放り投げ、博士が横たわるベッドの上に飛び乗った。

 博士は頭をかち割られていた。

 変形した頭。目は虚空を見つめている。しかしもう、博士の頭の原型は留めていなかった。博士は額を割られていた。陥没したそこからは血が溢れていた。私はそっと、その点に触れた。指に血がついて、私はそれを舐めた。

 そこからだった。私の中で何かが目覚めたのは。

 傷口をほじくった。卵の殻を割るように、指を突っ込んで頭蓋骨を完全に破壊し、そしていよいよ博士の頭に穴を開けると、また指を突っ込んで脳みそを……その一端を取り出し、口を近づけた。いくらか口につけた辺りでまどろっこしくなり、傷口に顔をつけて啜った。鉄の味、砕けた骨の欠片に混ざって不思議な、魅惑的な味がした。濃いミルクのような味だった。もっと生臭いが、しかし美味だった。私は夢中で啜った。

 美味しい。

 美味しいです、博士。

 その呼びかけに、博士が応えることは、もうない。

 分かっていた。分かっていたが繰り返した。心の中で。頭の中で。

 博士。

 博士。

 美味しいです。博士。


 *


 それが、チンパンジーが仲間を殺した後にする行動であることに気づいたのは、ある程度博士の脳みそを啜った後だった。

 頭蓋骨の中にどれくらい脳みそが残っているか分からない。しかし食事に飽きた私はしばし呆然として博士を見た。そうして我に返ると、チンパンジーが稀に仲間を殴り殺してそういう食事をとることをちらりと思い出した。私にもチンパンジーの本能が備わっていたということだ。

「人間だって命。虫だって命だ」

 博士の言葉を思い出す。

 誰かが博士の、命を奪った。

 博士が実験で動物の胚を潰すように、誰かが博士の頭を潰した。何を使って潰したのだろう、と辺りを見渡す。この時になってようやく冷静になれた私は、博士のベッドの接している壁に、血がついていることを認めた。それは飛沫だった。なるほど、博士はこのベッドで頭をかち割られた。

 再び辺りを見渡す。顕微鏡が無造作に落ちていた。そしてそれには血がついていた。これか。私は恐る恐るそれに近づくと持ち上げた。頭蓋骨を割るにはちょうどいい重さをしていた。

 まぁ、ある種の生き物ならこの程度の凶器では頭蓋骨に傷がつかないどころか毛皮に阻まれて皮膚に傷をつけることさえ叶わないだろう。だが人間にとっては間違いなく凶器だし、現に博士はこれで頭を割られた。私は顕微鏡をそっと実験用のデスクの上に置くと、ざっと見渡した。ペトリ皿と、試験管とが目に入った。

 あの中の細胞や、胚はどうすべきか。

 実験者がいなくなった今、ただの助手である私が、あの生き物にも満たない、だがまぎれもなく生き物の一部であるあれを管理するのは難しい。そして管理できない以上、必要以上の成長は避けるべきである。どう足掻いても生き物にはなれない細胞はともかく、胚は……場合によってはある程度発育する可能性がある。特に蛙のような生き物の場合は。

 生まれてから殺されるのは苦しかろう。

 私は実験体たちを処分することを決めた。スツールを持ってくるとデスクの上にある試験管や皿、フラスコの類をまとめ、ゴミ箱の中に叩きつけていった。本当はもっと正当な手段で破棄していくべきなのだが……自分の中のチンパンジーが目覚めていた私に理性的な行動は少し難しかった。少し、なのだが、少し、なのだ。

「人間だって命だ。虫だって命だ」

 私は今、大量の命……にも満たないか。だが命になろうとしていたそれらを、殺していた。

 思えば感慨深かった。

 私だって試験管の中で生まれたのだ。

 いや、出産そのものは母であるチンパンジーのコユキに行ってもらった。

 しかし受精卵は試験管の中で操作された。私は振り返った。

 アクリル板の向こう、この部屋の三区画目。博士が観察するための生き物を入れたスペース。

 そこに父がいた。母コユキを妊娠させた、厳密に言えば私の素となった精子を提供した、オスのチンパンジー。彼は紛れもないただのチンパンジーだった。そしてそのチンパンジーである父、ダンは……眠っていた。穏やかに、小さくなって。

 きっとアクリル板が音を遮断したのだ。そして明かりがついてもなお眠りこけていられる彼の性質は、紛れもなく人間と生活していたから身に着いたものだった。私はいくつもの実験体を始末してから、父をどうすべきか迷った。父も博士にとっては立派な実験動物のひとつだ。薬を投与されたり行動を観察されたりしている。父を殺すか。必要になればこの部屋の薬物でそれは可能だろう。

 しかし。

 私は再び振り返るとデスクの上を見た。試験管。この中で私は生まれたが、生物学的な父は間違いなくダンだ。私の細胞の一部は彼の睾丸の中で生まれた。母のコユキは頭が肥大化した私を産むに当たり死亡してしまったが、しかし父はこうして生きている。私の家族。私の血縁。

 結局、殺せなかった。父は生かしておくと決めた。何ということはない。食事を与えれば後はあのアクリル板の檻の中で何不自由なく暮らせるだろう。必要なら外に出してもいい。私は静かに博士の部屋を出た。然る後、客人たちが眠る実験室の方へと向かった。


 *


 叩き起こされた彼らはひどく不機嫌そうだった。しかし私は構わず、壁のスクリーンに文字を投射した。

〈博士が殺されました〉

 四人がどよめいた。

〈見たい方は隣の部屋へ〉

 淡々と、私は続けた。

〈博士を殺した人間はいますか〉

 誰も、答えない。

〈いませんか。どうせ一週間は逃げられません。白状した方が身のためです〉

 沈黙。

〈そうですか。分かりました〉

 私は一度キーボードから手を離すと、じろりと一同を見つめて、それからまた打鍵した。

〈安全の確保が必要。これは理解していただけると思います〉

 まず、女性陣が頷いた。続いて、千屋が頷いた。細田は黙ったままだった。

「あの、安全の確保よりも……」

 と、三木谷が挙手する。

「着替えはありませんか。服が濡れたせいで体が冷えて……」

 私は打鍵する。

〈ありません。博士の服はありますが、彼がそれをどこにしまっているのか私は把握していません〉

「そんな」

〈確かに濡れた衣類は体温を奪います。脱ぐことを推奨します〉

「脱ぐって……」

 柴田が男性陣を見る。

「無理」

〈低体温症の心配があります〉

 私は続けた。

〈羞恥心的な問題でしたら、以下の提案を飲めば多少は解決されるかと〉

 私は思い付きを打った。

〈今から皆さんには檻に入ってもらいます〉


 *


「ふざけんなよ!」

 叫んだのは細田だった。

「こんなところで過ごせって言うのか?」

 私は音声ソフトを入れた小型パソコンで文字を打った。

〈安全のためです〉

 四人の男女は今、実験動物をしまっておくための檻の中に入っていた。上下二段。左右に一部屋ずつ。計四つの檻の中に、裸の男女が入っていた。

〈上の段の女性陣。これなら裸体を見られませんね〉

「そ、そうは言っても……」

〈明日までに衣服の類は探しておきます。男性陣の分も含めて〉

 下の段にいる男性陣も、濡れた衣類の関係で裸だった。

〈鍵をかけます〉

 私はそれぞれの檻に施錠した。

〈こうすれば、少なくとも外部から攻撃に遭うことはありません〉

「お前が殺したんだとしたらどうなんだよ!」

 細田がそう叫んだ後、ハッとした顔をして続ける。

「お前がやったんだろ!」

〈私は殺していません。ただ……〉

 と、打鍵を迷った私は、しかし続けてこう打った。

〈食べたのは私です〉

「た、たべた……食べた……」

 三木谷がパクパクと口を動かした。

〈ええ、脳みそを〉

 と、脳裏に浮かんだあの光景が、体中の神経をびりびりと刺激した。たまらない、快楽だった。

「お前は……お前は何者なんだ」

 千屋の声が震えていた。私は音声ソフトで返した。

〈ヒューマンジーです〉

 不意に、人間たちが入っている檻の隣でがちゃがちゃと音がした。私は男女四人に目配せすると、その音がした檻に行った。

「ねぇねぇ、ねぇねぇ」

 オランウータンのユキだった。彼女は鉄格子をつかんでがちゃがちゃと蹴り上げていた。それから拙い手話でこう伝えてくる。

「お友達! お友達が増えた!」

「増えたね」

 私はパチパチと手を叩いた。

「明日の朝はみんなでご飯だ」

 するとユキが……ユキは冗談が好きなのだ……こうサインした。

「ご飯……人間のシチュー?」

 私は再び手を叩いた。

「いいねそれ」

 それから私は人間の入った檻の前を通って、部屋を出て、ドアを閉めようとした。この部屋の中にはゴリラのドンゴ、イッサク、オランウータンのハニー、ユキ、ボノボのスク、そして四人の人間がしまわれていた。私はふと、壁に設置されたキーケースの方を見た。檻の鍵はあそこにある。檻は外から施錠してある……そう管理表にあるはず。つまり檻の中からあのキーケースにアクセスすることはできない。そしてこの部屋のドアに鍵をかけてしまえば外からこの部屋に入ることはできない。完全に、閉じ切れるのだ。私はドアを閉めると鍵をかけた。それから部屋に戻って眠ることにした。


 *


 異変に気付いたのは夜中の三時のことだった。いや、目を覚ましたのが三時だった。

 私の眠りを妨げたのは、間違いなくあの大きな音だった。実験動物を入れている、あの部屋から音がした。私は体を起こすとペタペタと歩いて実験動物室へ向かった。

 聞こえてきたのは猿たちが檻を揺する音だった。興奮している。私は恐る恐る中に入ると、明かりをつけた。そして、驚いた。

 二段に分けた檻の中。男性檻と女性檻。

 男性檻の中に入れておいた、二人の男性が死んでいた。千屋と細田。二人の首が、おかしな方向に曲がっていた。

 二段目に目をやる。檻の中の女性たちが、震えていた。

 私は一度部屋から出て、音声ソフトの入ったパソコンを持ってくると、文字を打った。

〈何がありましたか〉

 しかし女性たちは答えない。と、隣の檻に入っていたユキと、ボノボのスクが檻を揺すった。

「悲鳴が聞こえた!」

 スクが手話で告げてきた。

「人間の悲鳴だった!」

「何か見なかったのかい?」

 私は手話で訊ねた。スクが答えた。

「見えたよ! 檻の戸が開いたんだ!」

「檻の戸が開いた?」

 私は訊き返した。

「それは本当かい?」

「本当だよ」

 ユキが檻を揺すった。

「『それ』は二回中に入った! 一回、入る、悲鳴。二回、入る、悲鳴」

 なるほど。と私は納得した。まず千屋……細田でもいい……の檻に入って首を折る。次に残された方の檻に入って、首を折る。

 しかし。と私は考え込んだ。博士を撲殺し、男たちの首を折り、一体全体殺人犯は、どこに潜んでいるのだろう。

 しかし今のところ、猿は安全である。

 だから私が殺されるリスクはかなり低いと思っているが、気味が悪いと言えば気味が悪かった。命を粗末に……と、考えて、おかしくなる。

 この研究室はそもそも命を扱う場所じゃないか。これまで潰してきた命なんて山ほどある。山ほど。そう、山ほど。

 私は歩いて、細田の入っている檻を確認した。戸を調べる。驚くべきことに、鍵がかかっていた。開けられていないのだ……開けられていないのだ。

 同様に千屋の檻も調べた。やはり鍵はかかっていた。

 どういうことだ? 私の中を疑問符が支配する。ちらりと上の、裸の女性陣を見る。彼女たちは怯えて震えていた。二人の内の三木谷、どうにも賢そうな女性が体をくねらせた。

「ねぇ、ねぇ、ジーさん。あの、私、何でもします。何でもしますから、どうか命だけは……」

 私はパソコンに入力した。

「それはいわゆる色仕掛けというやつでしょうが、私は人間とは種族が異なります。あなたに発情しない。無意味です。まぁ、あなた方人間が動物に愛着が湧く程度の感情はあるかもしれませんが」

 私は目線を下ろして、男性たちの入った二つの檻を見た。無残な死体。目は虚空を見つめている。口からは血。あらぬ方向を向いた頭はある意味芸術的でさえあった。野性を感じる。力強い何かを感じる。

 私は上階にある女性二人の檻を見た。戸を確認する。鍵がかかっている。何度か戸を引っ張る。開かない。大丈夫だ。

〈鍵はかかっていますね〉

 私は音声ソフトで告げる。女性二人が頷く。

〈一旦は、安全そうなのがご理解いただけたでしょうか〉

「あの、どうか、せめて別室に、この檻じゃない別室に……」

 柴田がそう乞うてきたが、私は静かに打鍵した。

〈この檻に閉じ込めるのは、あなた方が殺人犯でない証明にもなります。別室に移して更なる命が奪われた場合、必然自由度の高かった生き物が犯人ということになります〉

 そう、この檻は、人間の他ゴリラやボノボやオランウータンをしまったこの檻は、それぞれの生き物の無罪の証明でもある。これがあるから潔白なのだ。これがあるから安全なのだ。

 しかし。とはいえ。

 私はキーケースのところに行くと、檻用の鍵を全部手に取り、それから人間たちの入っている檻から少し離れたところに向かった。ゴリラの檻の前、ボノボの檻の前、オランウータンの檻の前、と通り過ぎたところで、立ち止まった。ここなら人間からは見えない。そこは博士がよく白衣をかけている衣服かけのある場所だった。今日も、そこには白衣があった。私はそのポケットに鍵をしまった。それから人間のために言葉を叩いた。

〈博士の死体を確かめてきます〉

 私は部屋から出た。女性二人が縋るような声を出した。

「お願い! お願いよぉ! ここから出して! 出してよぉ!」

〈駄目です〉

 私は最後の打鍵をした。

〈そこでおとなしくしておいてください〉


 *


 博士の部屋へと行った。

 無残に頭を割られた死体。それがあった。

 変形した頭。動く気配は、ない。

 これは立派な肉の塊だった。こいつが人を殺すとは思えない。

 もう一度、博士の傷口を指で撫でる。乾いた血が、ざらりとした。

 私は部屋を出た。この研究所のどこかに、殺人鬼がいる。


 *


 徹夜をしようと思ったが、しかし眠気に負けたのは必然だった。私は疲れていた。いつもならいない生き物、人間がこの研究所にいて、その応対に、疲れていた。おまけに殺し。殺しがあったのだ。

 目を覚ますと朝の五時前だった。まだ日は昇っていなかった。私はゆっくり歩いて、実験動物室へ向かった。

 猿たちが興奮していた。

 声を上げ、檻を揺すり、床を叩き、とにもかくにも騒いでいた。これだけ猿たちが騒いでいるのに女性たちが静か。と、いうことは。

 上階の檻を見る。

 百八十度曲がった首。

 哀れな裸体だった。つんと天井を向いた乳首が滑稽だった。彼女たちの首は彼女たちの体の描く曲線がままに、ぽっきり折り曲げられていた。それは美しいとさえ思った。

 私は下に降りると猿たちに訊いて回った。みんな、一様に答えた。

「戸を開ける音がした!」

「どんな音?」

「ギイイ、って!」これはボノボのスク。

「女の悲鳴も聞こえたぞ」

「ああ、パニックだった」こう教えてくれたのはゴリラのドンゴとイッサクだった。

「シチュー? 人間のシチュー?」こんな時でもオランウータンのユキはふざける。私はハニーの檻の前に立った。

「何か見なかったかい」

「私、最近目が悪くて」

 ハニー方言の手話は、やはり読み取りにくかった。

「何も見なかったわ」

「そうか」

 そして私は、先ほど白衣のポケットにしまった檻の鍵たちを探した。それらは、やっぱりポケットにしまわれていた。

 そんな馬鹿な。

 私は歩いてキーケースの傍に行った。そこには檻の管理表が置かれていた。読む。

 開けた。

 閉めた。

 開けた。

 閉めた。

 開けた。

 ここに来てようやく分かった。

 この夜、人間たちを恐怖のどん底に陥れた存在が。


 *


「君だったんだね」

 朝方。眠りこけた猿たちの様子を確認してから、私は告げた。彼女はパチパチと手を叩いた。

「すごい」

 衣服を着ていない彼女は、感心しているようだった。

「あなたやっぱり賢いのね」

「君ほどじゃないよ」

 私は床に置かれていた、音声ソフトの入ったパソコンを蹴り飛ばした。それから手を動かした。

「興奮してたね」

 手話だ。

「『方言』とでも言うべきものが強かった」

 彼女は反応しなかった。

「嘘をついていたんだ。心で何かが動いた時、君の方言はきつくなる」

 私の目の先。

 私が見つめていた先。

 檻の中、そこでじっとしている。

 オランウータンのハニーが歯を見せた。そしてまた、パチパチと手を叩いた。

「ジー、あなたの毛並み、やっぱり綺麗だわ」

「ありがとう」

 僕はお礼を表現した。

「すっごく、嬉しいよ」


 *


 ハニーは人間が嫌いだった。

 それは、親を人間のハンターに殺されたことが原因だった。ハニーは人間が嫌いだった。だから、まず手始めに博士を殺した。

 私がいけなかった。それは管理表に書かれていた。

 開けた。

 閉めた。

 開けた。

 閉めた。

 開けた。

 そう、私はハニーの檻の鍵を開けたままにしていたのだ。

 研究所で飼育している「仲間」たちを檻から出して実験すれば「開けた」。そして実験に参加してくれた「仲間」たちを再び檻に入れれば「閉めた」。私はハニーを檻に入れた後鍵をかけるのを忘れていたのだ。それはハニーが作業中に話しかけてきたからだった。

「あなた、うっかりさんだわ」

 いつかも言われたような言葉を、ハニーはかけてきた。私はこの言葉のせいで鍵をかけ忘れた。

「でもこうして、復讐が果たせた」

 ハニーは満足していた。

「あなたがキーケースに鍵をしまっていることは知っていたわ。そして私は暗闇の中でもある程度目が利いた。あなたが鍵をかけ忘れていることに気づいたら、私は檻から出て、真っ直ぐにキーケースの方に向かった。それから鍵を取り出して、まず下の段にいる人間たちの首を折った。二人分ね。それから檻を元通り施錠して、鍵をキーケースに戻した。そしたらあなたがやってきて、人間の死を確認した。そして、しばらくしゃべった後、人間たちの檻の鍵を白衣のポケットに隠した。でもそれは私たちオランウータンの檻の前でのことだったから、私には簡単に分かった。だからあなたがいなくなった後、私は再び檻の鍵を手に取って、今度は上の段にいた人間たちの首を折った。そうして鍵を元に戻して、後はゆっくりしてた」

 私は手を叩いた。

「見事だったよ」

「しかしいくら人間が嫌いだからと言ってもなかなか派手にやったね」

 私の言葉にハニーはふてくされた。

「同じ命なのに」

 ハニーは真理を表した。

「差がつくなんておかしいわ」

 大枠、同意できた。だから私は、鍵を手に取った。

「解放しよう」

 それは素晴らしい思い付きだった。

「僕たちの島にするんだ」

 それから私は自室に戻り、ベッドの傍にあった白衣を手に取ると、それを処分することにした。人間たちの死体は、解放した仲間が……ドンゴとイッサクが外へ運んでくれた。そうして不要になったそれらを、私たちは台風で荒れる海に投棄した。

 やがて……何日かの後、台風は晴れた。美しい孤島の楽園に、私たちは建国した。

 命が平等な国を。生命の格差がない国を。

                            了

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Zee 飯田太朗 @taroIda

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