第10話 火星見学
「よ~し、これから火星に降りたつぞ!」
宇宙船の倉庫でオドオドしている十人に呼びかけた。
幸運なやつらだ。宇宙旅行をタダ同然でできただけでなく、テラフォーミングを間近で見られるんだからな。
「え? 降りるって……」
「まさか、このまま?」
なんか地球人どもがウニャウニャ言っている。
臆病だなコイツら。せっかくの宇宙なんだから、走って飛びだすぐらいの元気が欲しいのに。
「おう! そのままの恰好で大丈夫だ。そういう装置があるから心配すんな!!」
ちなみに、地球からここへ来るまで十分ぐらいかかった。
お世辞にも早いとは言えないが、俺の財力ではこのぐらいの船しか買えない。
まあ、そのおかげもあって、地球人どもは宇宙に来ている実感が湧いたようだ。
なにせ倉庫は上下左右360度、足元に至るまで外の様子を映し出していたからな。
「名づけて、そのまま歩ける君だ!!」
そう言って取り出したのは、八個の球体。手を離すとふわりと宙に浮く。
「これがあると、呼吸もできるし寒くない。重力だって地球と同じだ。心配すんな」
そう言って倉庫の後部を開けた。
それから、ドッカン、ドッカン、水と二酸化炭素を噴出している水柱を指さす。
「まずは、あっちの方向に歩いていこう。近くで見たいだろ? 大迫力だぞ」
そのまま歩ける君は、なかなかの高性能装置だ。
隕石とかもはじき返す。安全面はバッチリなのだ。だって俺も一緒に行くからな。
ケガしたくないじゃん。
などと思っていたら、誰かが小さく手を挙げた。
えっと、誰だっけコイツ?
そうそう、宝田進だ。なんかよくわからんけど、印象に残ってる。
「あの、僕トイレに……」
宝田進はモジモジしている。
あ、思いだした。そういやコイツ、ウンコの途中だったな。
「おう! 火星でウンコしてもいいぞ! お前が火星で初めてウンコした人類だ。喜べ! 教科書にのるぞ!」
「え、いや、ちょっと」などと言っている宝田進に光線銃を突きつけると、元気いっぱい外へと飛びだすのだった。
配信者はエイリアン。火星をテラフォーミングして人気者に。 ウツロ @jantar
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