第9話 幸運な十人

 さらに数日がたった。

 火星のテラフォーミングも順調である。


 配信もまた順調だ。

 投げ銭こそまだ少ないが、登録者はかなりの勢いで増えている。

 チャンネルに寄せられるコメントも好意的なものが増え、やる気を後押ししてくれる。


「お~し、地球人ども。今日は特別企画だ。テラフォーミングを間近で見ているやつのリアクションを配信するぞ」


 前回の配信で予告していた、投げ銭の多かった順番に与えられるテラフォーミング鑑賞券だ。その様子を配信しちゃおうってのが今回の企画。

 

「まずはコイツ。東京都で会社を経営している十勝隼人くんだ」


 カチャリと宇宙船の扉を開く。すると、なんということでしょう。オフィスでパソコンを見ているウサンくさいヒゲのオッサンがいるではありませんか。


「おう! 迎えに来たぞ!!」


 宇宙船と隼人くんのオフィスを直結させた。ドアtoドアである。

 とうぜん、アポなどとっていない。隼人くんのパソコンには慌てふためく彼自身が映っている。


「ちょ、ちょ」

「おとなしくついてこい。拒否したら撃つぞ」


 光線銃をつきつけてオドす。

 これで撃たれたら骨も残らんからな。マジ抵抗すんなよ。


「喜べ! テラフォーミングを間近で見せてやる」


 アワアワ言っている隼人くんを宇宙船の倉庫に押し込むと、つぎの当選者のところへ宇宙船を向かわせる。


「ここか!」


 カチャリと扉を開くと、便器に座っている宝田進がいる。


「おい! 人が配信してるときにウンコなんてするんじゃねえよ!」


 宝田進は目を見開いたまま動かない。

 なんやコイツ。リアクションうす!


「ウンコの続きは明日にしろ! さっさと付いて来い!」

「イタタタタ。ちょま、ま」


 「ちょまま」ってなんだよ。

 奇声を発する宝田進の耳をひっぱって歩く。

 追尾型カメラはドアの向こうへ消えていくケツ丸出しの宝田進をとらえていた。


「よ~し、次はと」


 こうして十人の幸運な当選者を乗せて、火星へと飛んでいくのであった。

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