ある神様(自称)の告白

  • ★★★ Excellent!!!

【ご注意】最初に前作を読まれることを強くお勧めします!

作者の天城らんさんは、ノンフィクション短編の名手です。

前作『【実話】美少女戦士になれなかった私は聖母の笑みで断罪する』の続編にあたる本作は、作者さんが小学校高学年のころに出会った、実在の教師をめぐるお話。タイトルにあるとおり、「実話」をもとにしています。

よくこれだけ変わったことが身近に起こるものだな、とうらやましい気もする一方、一見ささいな日常の出来事に目を向け、その出来事が自分やまわりの人たちにどんな変化をもたらすか、注意深く見守る眼があるからこそ、こういった題材でもよい短編が書けるのだと思います。

主人公は、小学5年で遠い地方に引っ越してきたばかりの女の子、蘭ちゃん。

最初はろくに友だちもできなかった彼女が、6年に上がるタイミングで一発形勢逆転をねらい、「クラスの人気者になる」という目標を立てます。

そんな彼女の前に現われたのは、クラスの新担任「かみちゃん」こと神野先生。

「俺は神様だ。ここを天国にする!」

と意味不明の宣言をする神野先生の真意は、さっぱりわかりません。またハズレの担任を引き当てたかとガッカリする蘭ちゃんでした。

でも、一向に「天国」らしくならないクラスのなかで、たくましい彼女は友だち作りやバスケ部に新聞委員と(勉強以外で)がんばり、すこしずつ自分の世界を築いていきます。

クラスの人気者になり、みんなから好かれることを望んだ蘭ちゃんが、最後にはクラスメートと離れ離れになるのを泣いて悲しむほど、みんなのことを好きになっていく。

すっかり成長した蘭ちゃんたち。そのクラスに神野先生が明かした真意とは?

その不思議な思い出は、エレキギターとたて笛で合奏した「エーデルワイス」のメロディーとともに、彼女たちの心に残り続けるのでした。