普通の男の異常な執着

  • ★★★ Excellent!!!

主人公の靴職人ヨハンは「どこにでもいるごくごく普通」の男。ただし、「一見すると」と付け加えるべきかも――いや、あるいは、付け加える必要ないのかもしれません。

多くの人にとって、靴をはかない日はほとんどないでしょう。家の外に出るのに、素足というわけにはいきません。

女性の足に対する異様な執着心をもつヨハン。とりわけ、屋内でも靴を脱ぐ習慣がない国だと、男性がよその女性の素足を見る機会は、めったにないのでしょう。

その点、靴職人であるヨハンは、靴をはいていない女性の足を間近で見ることができる。ただし、相手は客として彼のところへ来る人だけです。上流階級の女性であれば、決まった職人がいるでしょうし、その場合でも採寸まで男性がすることはあまりないかもしれません。

心にかなうような女性の足には、靴職人といえども、そうそう出会えないわけです。その奇跡のような理想の足との出会いが、ヨハンの人生を大きく狂わせてしまう。

どれほど普通に見えても、人間はなにかしら普通でないものを抱えているのかもしれない。この作品は、そんなことを考えさせてくれます。

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