第20話

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先ほどまでお互いが猛スピードで動きながら攻撃を仕掛けていたのだが、現在二人はお互いの距離が離れた位置で止まっている。


原因はビースが背中に生えた翼で空を飛んでおりスードが攻撃を仕掛けることができないからだ。


「おい!それは反則ザンスよ!さっき見たくスピード勝負で蹴りをつけるザンス」


スードは空を飛ぶビースに向けて大声で苦情を言う。


「もう充分付き合ってやったろ。イスがもう終わらせたみたいだからな。もう遊ぶ時間は終わりだ」


ビースはスードの苦情を冷たくあしらう。


「降りてこないなら、下ろすまでザンス」


「蹴球(シュート)」


スードは近くにある石を次々にビースに向けて蹴り上げる。強力な脚力で打ち出される石に対してビースは空中を素早い動きで移動して石を避けながらスードに近づいていく。


「大猩猩槌(ゴリラハンマー)」


ビースはスードの真上まで近づくと両腕をゴリラの腕に変化させて両手を顔の前で握るとスードめがけて振り下ろす。


「旋風高蹴(ウィンドアッパー)」


スードはその場で回転して勢いをつけ、上空のビースに向けて蹴りを放つ。


拳と蹴りがぶつかり合うと、スードが蹴り上げた足が力負けして徐々に折り曲がってしまう。


「旋風反撃(ウィンドカウンター)」


スードは軸足を回転させビースの一撃を受け流した後に、受け流した力を利用した強烈な蹴りをビースに放つ。


ビースが振り下ろした両手はそのまま地面に当たると、既にビースの顔目掛けてスードの足が迫ってきている。


「一角(イッカク)」


ビースの額から一本の鋭く長い角が生えると迫り来る蹴りに対し、歯を思い切り食い縛りながら角をぶつける。


足と角が衝突するとビースの角がひび割れて壊れてしまうが、思わぬ反撃をくらいスードも怯んでしまう。


「中々楽しかったぞ!終わりだ」


「大猩猩拳(ゴリラストレート)」


ビースは角が割れたようだがダメージはないようで、スードが怯んでる隙にゴリラの腕に変化させた右腕で強烈なパンチをスードの胴体に放つ。


スードは放たれるパンチに反応することが出来ずに直撃するとその威力に吹き飛ばされてしまう。


「ぐっ、ロックの兄貴すまねぇでザンス。後は頼むザンス」


スードは遠くの方で戦闘を行っているロックに目を向けると、薄れゆく意識の中で一言残して気絶してしまった。


「はぁ、こっちも終わったから残りはバンさんの戦いだけか。イスも向かってるみたいだし俺は少し休憩させてもらうか」


先ほどまで猛スピードで走り回っていたため、ビースも限界が来ているようで地面に横たわると大の字でその場で眠りについた。


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「弟たちはやられてしまったようね」


バンはビースとイスが戦いに勝利した様子を見て妖艶に微笑む。


「そうみたいだな。だが弟達はしっかり任務をこなした。俺も任務を遂行するまでだ」


ロックも弟達が敗北してしまった様子を確認するがその表情に変わりはなく、自分自身の戦いに集中している。


「岩岩魂丸(ガンガンコンガン)」


ロックの自身を覆う岩が大きくなっていき、大きな丸い岩になると、バンに向かって転がって突撃しにいく。


「血操(ブラッドオペレーション)・破魔矢(ハマヤ)」


バンは自身の血で弓矢を作ると弦を限界まで引くと転がってくる大岩に向けて放つ。


血の矢が大岩に衝突すると爆発を起こして大岩を破壊すると、爆発により煙が発生する。


煙の中からロックが飛び出してくるがその体を覆っていた岩は剥がれておりバンに駆け寄りながら右手に岩を纏う。


「岩岩拳点」


「血操(ブラッドオペレーション)・分裂(ディビジョン)」


ロックによる拳がバンに叩きつけられる前にバンは体を10匹の赤い蝙蝠に分裂させて攻撃を避けると、ロックの背後で集合し元の体に戻る。


「なに!」


ロックは初めて驚いた声を上げると後ろに振り向こうとするが、間に合わずバンからの強烈な蹴りを背中に受けて吹き飛んでしまう。


ロックは体勢を整えるために両手に岩を覆い地面にぶつけて吹き飛ぶ力にブレーキをかける。


受けたダメージが響いてるようで口元から血が垂れており、ロックは血を手で拭う。


「そんなこともできたのか」


ロックは先ほどのバンが分裂して攻撃を避けたことに関心したらしい。


「ふふ、切り札は肝心な場面で切るものよ」


バンは余裕たっぷりの表情でロックの問いに答える。


「そうか、それなら俺も切り札を切ろう」


「岩巨兵(ゴーレム)」


ロックの体が先ほど同様に岩で覆われて大きな丸い岩になると、その丸い岩を中心に頭、腕、足を作り、全長10メートル程の人型の岩が現れる。


「でかいわね。ただこちらは増援が来たからここからは2対1での戦いとさせてもらうわよ」


バンは目の前のゴーレムを見上げているとこちらに近寄ってくるイスの気配に気づく。


「バンさん加勢に来ましたよ!」


イスはバンの隣に立つと左手の小指から赤い糸を伸ばしてバンの左手の小指に繋がる。するとバンの体が赤く発光する。


「ちょうど良いタイミングだよイス。すぐ終わらせるからね」


バンとイスが話している間にゴーレムは右腕を振りかぶっている。


「血操(ブラッドオペレーション)・極(ウル)・破魔矢(ハマヤ)」


バンが作成した弓矢は先ほどとは違い赤い光で覆われておりイスの力で強化されているようだ。


バンがそのまま矢を放つと迫ってくるゴーレムの右腕を吹き飛ばす。


だが、ゴーレムはすぐさま残った左腕で殴りにくる。


「離れなさい」


バンは矢を放った隙をつかれ避けられない事を理解すると側にいるイスをゴーレムの拳の範囲から突き飛ばして逃す。


「バンさん!」


バンはロックの拳に直撃してしまい吹き飛ばされる。


「血操(ブラッドオペレーション)・極(ウル)・破魔矢(ハマヤ)」


しかし、バンは空中で吹き飛ばされている体制で弓矢を作り、ゴーレムの残った左腕にも矢を当てて破壊する。


ゴーレムは両腕を失ったが、今度は足でイスを踏み潰しにいく。


イスが踏み潰される寸前でイスの小指から伸びている赤い糸によってバンの元に勢いよく引っ張られ潰されずに済む。


「助かりました!」


イスは満面の笑みをバンに向けると、バンも軽く微笑みを返す。


「これで終わりよ」


「血操(ブラッドオペレーション)・極(ウル)・破魔矢(ハマヤ)」


今度の矢はゴーレムの胴体に当たると胴体が破壊され、残っていた頭と足も崩れ落ちていく。


破壊された胴体の中からロックの姿が現れるとそのまま地面に向かって落ちると鈍い音と呻き声が聞こえてきた。


「大したもんだよ。あの一撃を受けてなお意識が残っていて、落下する際に体を岩で覆う余力もあったんだからね」


バンは倒れているロックの側に近づくと僅かにまだ意識のあるロックに向けて話しかける。


「流石は超能隊だな。俺ら三兄弟が全員やられるとは、、だが任務は果たした」


ロックは戦いに負けたはずだが満足そうに話す。


「あなた達が依頼されている任務は殺しではないんですかー?」


バンの隣まで歩いてきたイスがロックに問いかける。


「別に言っても構わないことか。我ら三兄弟に依頼された任務はここにいる超能隊の足止めだ」

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